秋の奈良探訪〜その1.薬師寺

京都都ホテルに泊まって、美味しい京都の朝ごはんを食してから、2日目は京都よりさらに古い都、奈良に向かいます。

 

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近鉄京都線特急で西の京へ。

 

特急券が必要だけど、これだととても早く、京都から40分ほどで西の京に到着。

 

薬師寺唐招提寺は修学旅行の定番で、行ったことのある人は多いと思う。

夫もわたしもン10年前に行った朧げな記憶があるだけで、再建された薬師寺の西塔も見たことがないので、訪ねることにしました。

 

交通至便、西ノ京の駅から歩けます。

 

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勝手なイメージで、奈良っぽい景色。

 

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まず薬師寺から。

 

 

薬師寺天武天皇9年(680年)、天武天皇の発願により、飛鳥藤原京奈良県橿原市城殿〈きどの〉町)の地に造営が開始され、平城遷都後の8世紀初めに現在地の西ノ京に移転したものである。ただし、飛鳥の薬師寺本薬師寺北緯34度29分33.88秒 東経135度48分0.95秒)の伽藍も10世紀頃までは引き続き存続していたと見られる。

wikiから借りました)

 

 

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駅から行くと南門ではなく裏から入るようになります。

え?こんなにスッキリ綺麗だっけ?

というのが第一印象。

東塔と金堂しか覚えていなかったので、こんなに真新しい僧坊と大講堂に迎えられて驚きました。

大講堂には弥勒三尊像(奈良時代)、仏足石、仏足石歌碑(奈良時代、国宝)が祀られていて、はるか昔大学で仏足石歌碑に刻まれた万葉仮名を学んだことなど思い出して、懐かしく思いました。今でもちょっと読めた…

夫は脇侍の観音像が「腹筋すごくね?」と気になったようでしたが、腰の捻りならば金堂の菩薩さんもすごいわよ、ということで金堂へ。

 

 

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ずっしり立派な金堂。

昭和51年の再建。

 

 

 

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金堂には薬師三尊像が祀られています。

白鳳時代の美しい仏像が、今日まで消失せずに守られました。

彫りの深いお顔とか、腰を捻るポーズとか、本尊台座のギリシア、中東、インド、中国の影響を受けた紋様とかから、白鳳時代の大和がグローバルな文化を持っていたことがわかります。

朱の色も鮮やかに創建当時の姿が再現されているので、京都のお寺とは違う、若々しい鼓動を感じます。

 

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昭和56年に再建された西塔。

 

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白鵬時代から残る唯一の建物、東塔。

三重塔ですが裳階がリズムを作っていて、確かフェノロサが「凍れる音楽」と称賛したフォルム。

水煙も美しい。

 

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東塔から西塔を臨む。

 

 

 

 

東院堂には聖観音菩薩立像が祀られていて、とても清新な美人?です。

白鳳時代でも薬師三尊像より、もう少し古いかもしれないように見えます。

 

 

1991年に建てられた玄奘三蔵院伽藍に寄りました。

 

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ここの回廊でちゃんとチケットチェックがあります。

お商売ですなあ…

むろん、数々の文化財を保護保全するには財力も大事でしょう。

 

 

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ここが実は拝観した時には知らなかったのだけどWikiによれば、結構びっくりな創建事情が。

 

 

 

日中戦争玄奘のお墓を発見することになったなんて…

無理やり奪ったんじゃないでしょうね?とちょっと心配になるけど、こうやって堂々と祀られているのだから、中国と言っても当時の中華民国は納得したのでしょう。

(本当に玄奘さんの骨かもわかんないけど、と無信心者は思う)

 

西域といえば平山郁夫、という壁画が掲げられていますが、天井のラピスラズリを使った星宿の意匠は綺麗でした。

 

 

東大寺などもそうだけど西の京の大寺院も平地に立っているので、歩くのは楽です。

 

ここから唐招提寺に向かいます。

秋の京都探訪〜紅葉の永観堂。

というわけで、元々病気持ちの上に顎骨を骨折するという情けない状態で、予定していた京都旅行を敢行しました。

友人夫婦が「今ホテル代が安いので、京都駅前のホテルに泊まり、奈良へ行ってきた」というのを聞いて、羨ましくなって真似してしまいました。

本当にホテルの宿泊費がどこも安く、駅前の都ホテルもコロナ以前なら考えられない価格。

さっそく予約しましたが、サービスも値段に見合ってややよろしくない。

でも安いから。

 

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京都着。

羅城門の10分の1の復元モデルと京都タワー

京都タワーはあまり好きでないけど。

 

 

お昼にお蕎麦を食べてから、南禅寺に近い永観堂へ。

南禅寺哲学の道も何度も行ったことがあるのに、永観堂は初めて。

 

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多分南門だと思う…ヘボな写真だなあ…

 

 

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総門から入ると、境内にはところどころ色づいた紅葉が。

行った日の翌日6日から寺宝展と夜のライトアップが始ま理、拝観料も1000円(プラス消費税)になるそうですが、この日はまだ600円。

紅葉の盛りには少し早かったけど、十分綺麗でこのコスパは大変結構でした。

 

 

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永観堂禅林寺は863年弘法大師の高弟真紹僧都が、清和天皇から寺院建立の許可をもらい、禅林寺という名前を賜って、真言密教の寺として始まった。

永観律師の時代(1033〜1111)に禅林寺は大きく発展、境内に施療院を立てるなど恵まれない人々のために奔走、永観律師を慕う人々によって、禅林寺永観堂と呼ばれるようになった。

修行中の永観を先導し、振り返って「永観、遅し」と言われた阿弥陀仏を本尊として、「みかえり阿弥陀」と呼ばれています。

現在は浄土宗のお寺です。

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横からも(振り向いているから横から見ると正面)拝観できる、愛らしく穏やかな表情の阿弥陀さんです。

 

 

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放生池周りが素晴らしく綺麗。

 

 

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紅葉に包まれた多宝塔が特に有名なようで、お寺のパンフの表紙にもなっています。

周囲はもっと真っ赤に染まるとか。

でも、この日もとても美しい眺めでした。

 

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いろんな種類の紅葉があります。

 

 

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深まりゆく秋を堪能してから、ちょっと哲学の道へ。

 

 

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ここが銀閣寺への出発点。

ここだけ見て、南禅寺へ。

 

 

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絶景かな〜の三門です。

 

 

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南禅寺は日本で最も格式の高い禅寺で、周りに塔頭がいくつもあります。

 

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応仁の乱の主人公、山名宗全のお墓があるお寺。

 

 

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だんだん日が暮れてきました。

 

 

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一休みに寄ったカフェ。

京町家を改装したお店で、ブルーボトルのコーヒーを。

 

casabrutus.com

 

実はブルーボトルのコーヒー、初めて飲みました。

美味しかった〜

 

すっかり暗くなった蹴上までの道を、琵琶湖疏水を見ながら散歩した後、予約していた南禅寺の湯豆腐屋さんに入りました。

 

 

初めて行った永観堂、とても美しい秋景色に包まれていました。

 

 

顎骨骨折‼︎〜バカの報い( ; ; )

またもやブログ放置状態のまま11月も1週間が経ってしまいました。

なんだかんだで無為に時間だけ過ぎていったのですが…

 

なんと!

先週の月曜日、1日に転んで顎から歩道に激突。

筋力が弱っている上に、手に荷物をいっぱい持っていたので、手をつくことができず、

躓いた次の瞬間には、顎を強打。

たちまち口から出血、前歯が折れてしまった嫌な感触が…

すぐに近くの整形外科医院に飛び込みました。

するとやっぱり前歯が1本欠損。

そして、顎にはひどい裂傷。

顎の皮膚を5、6針縫う羽目に。

痛いよ〜

 

もう夕方になっていたので、翌日歯医者へ。

詳しく歯の周りのレントゲンを撮ってみたら、

左の下顎骨が〜〜〜

 

折れているううううう

 

 

歯科では処置できない、口腔外科へ行きなさいと、紹介状を書いてくれました。

とりあえず、前歯はセメントで応急処置、神経ギリギリのところまで折れていたので、かっこ悪いけど、ないよりはましな歯をつけてくれました。

 

歯医者さんでもらった紹介状を持って、タクシーで大きな病院の口腔外科へ。

口腔外科なんて初めて…なんか怖い。

 

CTで詳しく見ると、やっぱり下顎骨の上の方、上顎骨に近いところで折れてます…

と、小顔にお目目ぱっちりの美人のお医者さんに言われた…

美人でも私はあまり嬉しくないけど、怖いおジジよりはいいかな…

 

ともかく。

その場所は手術は普通しない。

なにやら上下の歯茎に釘のような鋲のようなものを5本ずつ打ち!!!

上下の鋲にゴムを引っ掛けて顎を正常に戻すんですってよ。

 

超怖い!

 

しかしその日はまだ口に中の出血もあり、腫れているので1週間の猶予。

 

どうなることやら…

 

フランケンシュタインみたいな顔になるんだろうか…

 

 

幸い口中の傷は治り、左頬の痛みも薄れてきてはいます。

このままそんな恐ろしい処置はしないで済むといいけど…

 

しかも元々の病気の治療日も迫ってきていて、あたしゃどうなるのでしょ。

 

それもこれもバカの報い。

バスを降りてから、気をつけてゆっくり歩いていればよかったのに、つい走り出して躓いてしまった。

 

 

さらにバカなことに、負傷した4日後に、予約してあったからキャンセルするのも悔しいと、

京都旅行を敢行しました。

肩、膝あたりは打撲で痛かったけど、旅行中に痛みは消えました。

 

そうして、無事に帰ってきました。

顎が痛くて硬いものは食べられなかったけど、京都はお豆腐がおいしいので、なんの問題もなかったです。

ただ、あまりにもバカなので、旅行のことは、整形外科の先生にも歯医者さんにも、口腔外科の先生にも、元々の病気の主治医にも内緒です。

そういや何年か前に足指骨折した時も、新潟旅行敢行したわ。

 

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10月28日に行った深大寺

紅葉が少しずつ進んでいました。

 

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10月30日、2年ぶりに行ったフクアリ

 

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ジェフはいいチームになっています。

東京はもうおしまい。

結局今季チームの成熟はあまり見えず、長谷川健太さんはモチベーションや強度を上げるにはとてもいい監督だけど、戦術的な積み重ねは、コーチも手薄だったこともあったのか、結果を見ることはできませんでした。

それでも降格しなかったのは幸い。

0−8負けという信じがたい情けない試合を最後に東京を去るのは、寂しいような仕方無いような…

しかしマリにはかなりの点差で負けると予想していたから、ものすごくビックリではありません。

 

と、サッカーのことは置いといて。

今週も医者通いで何もできそうにありません( ;  ; )

映画館で映画を〜「明日に向かって笑え!」

10月11日、なぜか公休日ではなくなったその月曜日、コロナ患者も減ってきたし、映画館の感染対策も整っているので、また出かけようか、なんか気楽に見られそうなもの…

と、探したところ、「明日に向かって笑え!」がいい、と。

上映館が吉祥寺アップリンクしかなく、「映画館で映画を」というにはたいそう小さな箱で、ちょっとした小金持ちのホームシアターくらいな感じ。

まあ仕方ないか。

 

いつものように映画.comから借ります。

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アルゼンチン映画瞳の奥の秘密」の脚本家エドゥアルド・サチェリと主演リカルド・ダリンが再タッグを組み、金融危機のおかげで夢も財産も奪われた小さな町の人々の奇想天外な復讐計画を描いた痛快ヒューマンドラマ。2001年、アルゼンチンの寂れた田舎町。元サッカー選手のフェルミンら住民たちは、放置されていた農業施設を復活させるため、貯金を出し合うことに。しかしその金を銀行に預けた翌日、金融危機で預金が凍結されてしまう。しかもこの状況を悪用した銀行と弁護士に預金を騙し取られ、住民たちは一文無しに。奪われた夢と財産を取り戻すべく、驚きの作戦を練る彼らだったが……。リカルド・ダリンの息子で、「永遠に僕のもの」で知られるチノ・ダリンが出演し、父子共演を果たした。

2019年製作/116分/G/アルゼンチン

 

 

瞳の奥の秘密」は映画館で見て、結構面白かった。

そうか、あの脚本家か。

 

原題は「まぬけたちの一連の長い冒険」。

この作品、アルゼンチン映画ですからワタクシ全くわかりません。

が、地名以外で一つだけ聞き取れたのが「ロホ」。

あまりいい言葉ではないようですが、言わずと知れたリーズの監督ビエルサの仇名が「エル・ロホ」。

馬鹿げたやつ、かなり頭がアレなやつ、といった意味のよう。

 

で、この作品にはおかしな連中ばかり登場します。

 

主人公のフェルミンは元サッカー選手でCAチャカリタ・ジュニアーズに属し(実際にこのクラブはスーペルリーガに属しているらしい)、一度大きなカップ戦でフェルミンのゴールで優勝したことがあり、田舎町の英雄として、銅像(みたいななんか)が建てられているほど。

しかし引退して年数も経ち、フェルミン像も禿げたり傷んだり…

そのゴールも相手に当たって入ったとか本人はあまり触れたくない過去。

しかし、体も心もでっかい妻とは仲良く、それなりに幸せそう。

その彼が、しけた田舎町の活性化を夢見て、資金集めに奔走し、集めたお金を銀行に預けた迄はよかったけど…

遠い日本でも聞いたことのあるアルゼンチンの金融危機が・・・

1990年代には、兌換制(1ドル=1ペソの固定相場)の下で、自由開放経済政策を促進。この結果、ハイパーインフレの収束、投資の増加により、高い成長率を達成。しかし、1999年1月のブラジル金融危機の影響もあり、次第に景気が低迷し、2001年後半には金融不安が金融危機や全般的な経済危機に転化。政府は対外債務の支払い停止(デフォルト)、兌換制の放棄(自由変動相場制への移行)を行った。経済危機と外貨不足の中、2001年12月に、アルゼンチン政府は、支払のための外貨不足から1320億ドルにのぼる公的債務の一時支払停止を宣言。 これによりアルゼンチン金融危機が表面化した。

 

この情報をいち早くゲットしていた銀行マンと弁護士が、彼らの財産を含めて、銀行のお金をごっそり騙し取ってしまい、現金を弁護士の持っている(なにしろ土地は広大)荒地の林の中に地下金庫を拵えて保管する。

 

それを知ったフェルミンはじめ仲間たちが自分たちの財産を取り戻すべく、計画を立てる…

何度もピンチに陥り、最大のピンチはフェルミンの妻の事故死で、すっかり打ちひしがれてしまい、仲間の呼びかけにも応じなくなるのだけど、妻の代わりに成長した大学生の息子(実際の息子だそうで似ている)が、立派なメンバーになっていき、父親も計画に復帰する。

息子と、悪徳弁護士の事務所で働いているかわいい女子とは、予想通りの結果に。

 

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次々に難題が生じたり、アホな失敗もあり、またメンバーも相当癖の強い連中なのが、話が進むにつれ、それぞれの得意分野を生かし、団結力も強くなっていきます。

地下金庫を拵えた弁護士が、彼らの策略で神経がやられそうになるのもいい気味。

 

最後はかなり乱暴にやってしまうのだけど、なにしろアルゼンチン中が大混乱の時期なので、その後は平穏で期待した通り、ホッとして映画館を出ることができます。

 

どうなるかは大体わかっても、奇妙な笑えるエピソードがあり、また親子の悩みや、おかしな兄弟や、バイタリティーに満ちた貧乏な親父とか、細部に面白さがあって、小さいスクリーンでも十分に楽しめる映画でした。

 

府中市美術館「動物の絵〜日本とヨーロッパ ふしぎ・かわいい・へそまがり」

始めに。

先週から体調が悪く、ブログもすっかりご無沙汰していました。

いつもご親切に訪問してくださるブロガーさんのところへも伺えず、誠に失礼致しました。

寝込んだのは数日ですが、なかなかiPadに向かう元気はなく、だら〜〜〜っとDAZNでサッカー見たり、WOWWOWで最近ハマっている中国時代劇見たりしていました。

中国時代劇は「山河令」という、呆れちゃうようなイケメン(この言葉あまり好きでない、美男と言いたい)二人が主人公のドラマに夢中になっています。

 

それはともかく。

そろそろ社会復帰は十分にはできないけど、ブログ復帰くらいはしないと。

 

記憶もかなり曖昧になってしまいましたが、10月8日に行った府中市美術館の「動物の絵」展について。

 

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入り口にあるパネルです。

これだけでなんか面白そうではないですか。

古今東西の動物の絵を集めた催しです。

府中市美術館の面目躍如、会場に入るなり、伊藤若冲の「象と鯨図屏風」がドーン!と迎えてくれます。

いくつかのブロックに分けてありましたが、もう忘れてもうた…

最初のブロックには、主に江戸初期から明治初期くらいの日本でよく描かれていた動物の絵が展示されていました。

熊とか狐狸、カエル、鷲、虎、龍、猿など。

中でも蛙は西洋ではあまり画題にならないと思うけど、日本ではユーモラスでかわいい絵が多いようです。

岸勝(がんしょう)の「猿の坐禅図」も面白かった。

 

次に西洋の動物の絵。

 

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この看板にある絵もそこに展示されていました。

ルーラント・サーフェリーという人の「神の救済に感謝するノア」。

よく知らないけど1576〜1639年のフランドル生まれだそうだから、北方ルネッサンス後期からマニエリスムの頃の人なのでしょうか。

画題は見ればわかる、ノアの箱舟が地について、乗せていた全世界の動物たちが地上に出たところ、写真では黒くなってわからないけど左隅の木立の中で、ノアが命を救われた感謝を神に捧げています。

動物は聖書にある通り一つがいづつ、解説にもあったように、神様からノア(人間)にその命の生殺与奪を委ねられた、人間の保護下、人間に対する自然界のものとして、西洋絵画では扱われています。

しかしこの絵では細かく細かく動物が丁寧に描かれていて、箱舟によって守られた命の重さを感じることはできるように思います。

西洋にも動物を擬人化した絵は多いけど、寓話による教訓として描かれていて、可愛さより、愚かさや醜さを感じさせるものが多いようです。

このブロックではアンジェロ・マルティネッティというアーセナルのFW←←

みたいな名前の画家の「鹿と猪のある静物」という絵があります。

19世紀末から20世紀初頭の人だそうですが、狩猟画を得意としていたとの解説通り、本物より本物みたいな精緻な筆致で、鹿も猪もものすごくリアルなんだけど、構図がありえない感じで、妙にシュールでした。

 

ゴーギャンの版画も、今まで見たことがなかったので面白かった。

 

ここで人と共に生きる自然界の生き物としての日本の動物と、神様に支配を委ねられた西洋の動物への認識の違いが語られています。

ヤン・ヨンストンという17世紀の学者の「動物図譜」も、そういう人間が治めるべきものの図録んなのかしら?徳川幕府にも献上されたそうです。

一番上の写真のパネルの下から、ニュ〜ッと顔を出しているシュモクザメが、その図譜から取られた絵。面白い。

 

 

次のブロックで藤田嗣治の「授乳の聖母」もランス美術館から来ていました。

なんか違和感あったなあ…赤ちゃんイエス様と猫でも抱いていたっけ?忘れた。

しばらく日本の、擬人化した動物の絵が続いていたと思う。

ユーモラスでかわいい絵が色々。

そして西洋の擬人化された動物の絵も。

 

蕭白国芳だのデューラーだのボナールだの見逃せない絵が展示されています。

ルドンやギュスターヴ・モローのような想像上の動物、また物語の中の動物も紹介されます。

ルドンのはペガサス、モローはお約束の一角獣。

聖ヒエロニムスとライオンの話はデューラーはじめ4作品展示されています。

おとなしいライオンということで、なんだか愛嬌があります。

 

「動物の絵」展では1ブロックを徳川将軍家光の作品群に当てています。

もう、すっごく下手。

ヘタウマというけど、下手。

 

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でもなんだか可愛くて、つい絵葉書を買ってしまいました。

 

しかしな〜将軍様が「ほれ、わしが描いた絵じゃぞ、そちにくれてやろう、ありがたく受けるが良い」なんて言ってくれても、困った藩主や旗本はいたでしょうねえ。

特に美術にうるさい殿様は嫌だったろうなあ…

 

でもつい笑っちゃうほど下手で可愛いものだから、実は2枚も絵葉書買っちゃった。

誰に出そうかな〜

 

 

 

 

そして、近世、近代になると、動物のリアルな様子や、可愛らしさや、勇猛さなどを、東西を問わず描かれるようになります。

 

 

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上の絵は円山応挙の描いた超かわいい子犬たち。

応挙はやっぱり上手いですな〜

 

というところで、なかなか楽しい「動物の絵」展でした。

府中市美術館の催しはいつも面白い。

 

 

ランチにはこれもいつものように館内の「森乃珈琲店」で、キッシュプレートをいただきました。

 

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一緒に写っているスタンプカードは、恒例になっているもので、今回はメッセージカードでした。

メッセージのスタンプも3種類ありましたが、私は絵のスタンプだけにしました。

 

カボチャとお芋のキッシュで見た目よりボリュームがあり、私にはちょうどいい。

 

 

今回も長くなってしまった…

 

最後までご覧くださった方がいらしたら、心より御礼申し上げます。

 

 

 

「GENKYO横尾忠則」東京都現代美術館、エネルギーにやられて…

ゴダールに続いてオジイチャンの作品です。

横尾忠則ゴダールより少し年下、83歳だそうです。

この人もわたしよりずっと年上なのに、ずっと元気でずっとエネルギッシュ…

あたしゃとても80歳どころか70まで生きるのもおぼつかないので、彼らの生命力にはただただ感服いたします。

 

清澄白河東京都現代美術館にはずっと前、10年くらい前かしら、1回行ったことがありますが、うちからは東京都で一番遠い美術館かも。

ほぼ千葉だし、ここまできたらフクアリも近いよねえ…試合やってないけど…などと言うくらい。

 

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左の2枚が横尾忠則展のポスター、自画像です。

会場は予約制なのでまずまず人はいるけど密ではありませんでした。

若い人もいるけど、昔サイケデリックなファッションでコンサートとか言ってたんだろうな〜と思わせるオジオバも多く、もしかすると横尾忠則の初期作品、天井桟敷の「腰巻きお仙」なんかにも通ったクチかも。

 

横尾忠則(よこおただのり)
1936年、兵庫県西脇市生まれ。高校卒業後、神戸でデザイナーとしての活動を始め、1960年に上京、グラフィック・デザイナー、イラストレーターとして脚光を浴びる。その後、1980年にニューヨーク近代美術館で大規模なピカソ展を見たことを契機に、画家としての本格的な活動を開始。様々な手法と様式を駆使して森羅万象に及ぶ多様なテーマを描いた絵画作品を生み出し、国際的にも高く評価される。2000年代以降、国内の国公立美術館での個展のほか、パリのカルティエ現代美術財団(2006)をはじめ、海外での発表も数多く行われている。
2012年に横尾忠則現代美術館(兵庫県神戸市)、2013年に豊島横尾館香川県豊島)開館。

 

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館内ロビーのインスタレーション

予約時間まで間があったので、これを見ていたら、奥からやや太く活力のある男の人の声がする。

と、スタッフやカメラマンに囲まれた横尾さん本人でした。

とても80代には見えない…こっちの方がよほどトッショリに見えるんじゃ…

片耳が突発性難聴でほとんど聞こえないとか、腱鞘炎で腕も痛いとかTVで聞きましたが、見たところお元気そうでよかった。

 

 

撮影禁止でしたが、横尾の真っ赤な唇で開いた口のモチーフを貼り付けたマスクを、いろんな有名人がつけているコラージュもありました。

本人が承諾したかは知りませんけど、面白かった。

 

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www.fashion-press.net

 

 

内容は上の通り。

初期のポスターやイラストから、今年描かれた作品まで、膨大な量の作品展でした。

 

 

 

一言で感想を言うと、ものすごいエネルギーにやられた。

生命エネルギー、創作エネルギーというか。

500点以上の作品群ですから、見るだけでも時間がかかるし、どれもどうじゃ〜とばかり横尾ワールドが表出されているので、もうヘトヘトになりました。

 

ブログも今日3本目だから今ももう疲れたし←

 

初期の方のインドやチベット仏教的なものと、受胎告知を組み合わせた(コラージュも)作品も当時、評判だったように思いますが、わたしはあまり好きではない…

絵画的な面白さはあっても、それ以上ではないように思います。

彼はそれなりに何か求道していたのかもしれないけど。

 

ポップな色使いの赤い唇を持った作品は、面白いけどあんまりたくさん見たので、どれがどれかもうわからなくなった…

 

好きだったのは最近の作品で、タイトルの「GENKYO」もその一つ。

ゴダールは過去の映画の「リメイク」したシーンを多く入れてたけど、横尾忠則は基本的に自分大好きというか、関心のほとんどは自分にあるようで、年齢のせいでしょうか、過去の記憶というより、今も意識には生きている人々の姿、幼い自分を繰り返し描いています。

モチーフのいくつかは…初めて見た映画「ターザン」のジェーン、三人ののぞくあるいは見下ろす少年たち、過去の記念写真などなど…

また犬は哀愁、悲しさ、残酷さ、貧しさの象徴のように描かれ、猫は猫のまま。

多分猫好きだな、と思って見ていたら、ペットの「たま」へのレクイエムというコーナーがあり、愛らしく賢しそうなたまの絵がいくつも掲げられ、その頃横尾自身も病気だったのと重なり、もういないであろうたまへの想いが伝わってきました。

 

彼は収集癖も尋常ではなく、滝が好きで絵葉書を集めたもので一部屋インスタレーションを作ってありましたが、これが呆れ果てるほどの滝の絵葉書の量。

壁中、天井までびっしり、こんなに集めるなんて、集めだすと止まらないのね。

 

作品の中にも滝は繰り返されます。

繰り返されるものは色々あるのでキリがない…

 

Y字路の作品群は、面白く感じない人もいるかもしれないけど、わたしはこの静謐な不安定感、気に入りました。

Y字路も繰り返し描かれ、しまいにはポップなY字路もありますが、何か不安感も漂うような普通の街の絵にも見える作品が好きです。

 

最近の作品には、昔の記念写真から顔の切り抜きを貼り付けたものが多くあり、お父さんとアイスクリームを食べている絵などもそれです。

木の上にはその多分故人が多いであろう写真の顔たちが過ぎた時間を表しているようで、足元には餓鬼草紙の餓鬼たちがうっすらと描かれていて、不気味な時代感を表して要るようです。

その中でお父さんとアイスクリームを食べる、親子の幸せは不可侵ということでしょうか。

 

などなど考えたり、最後の方にはなんと寒山拾得がトイレ掃除などしていて、面白く見ました。

 

しかしもうこっちがエネルギー切れ。

 

11:30の予約だったのですが、見終わったら14:30。

ランチはせっかくだから深川飯の店に行こうと思っていたけど、美術館から少し歩くし、この時間でやっているかわからない。

それももう足が痛い。

で、館内のカフェでサンドイッチを。

 

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サラダと、エビフライサンドと、イチゴとクリームのクロワッサンサンドとコーヒー。

エビフライサンドは温めてくれて、美味しかったです。

深川飯は自分で作ろう…

 

 

清澄白河駅周辺をちょっとウロウロして、83歳のエネルギーにすっかりやられて、足痛い疲れた…と言いながら、帰宅しました。

うちで映画を〜「イメージの本」ゴダール。

たまには少しはちゃんと映画を見ましょう、ということで。

今回は

 

イメージの本

監督 ジャン=リュック・ゴダール

またメンドイから映画.comのまとめを借ります。

 

 

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ヌーベルバーグの巨匠ジャン=リュック・ゴダールが、暴力・戦争・不和に満ちた世界への怒りを、様々な絵画・映画・文章・音楽で表現した作品。過去人類がたどってきたアーカイブの断片を中心に、新たに撮り下ろした子どもたちや美しい海辺などの映像を交えながら、ゴダール特有のビビッドな色彩で巧みにコラージュ。5章で構成され、ゴダール自らがナレーションを担当した。2018年・第71回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、特別に設けられた「スペシャル・パルムドール」を受賞した。

2018年製作/84分/G/スイス・フランス合作
原題:Le livre d'image
配給:コムストック・グループ

 

 

この時ゴダールは87歳だか88歳か。

カンヌではわざわざゴダールのために「スペシャル・パルムドール賞」を設けました。

天皇の上の上皇みたいな?

しかし彼は後白河上皇法皇)のような権力欲はなく、むしろ孤高のジイサマとして、あくまで一人で語り、一人で(無論スタッフはいるのでこれは比喩)美しい映像を作り、そして怒りを表しながら、絵画、映像、文章、芸術の力というか、可能性を信じていることを感じさせて終わります。

語りの短さ(過去の作品に比べて)には、多少さしものゴダールも年取ったかなあ、と思いましたが、映像美と、イメージの引き出しの多さはやっぱりゴダール

いつもの彼らしく5という数字にこだわって…PCを叩く指が5本ということから象徴的に始まり(菊地成孔はキーボードは指10本使うんじゃね?とツッコミを入れますが)、作品も5章に構成されています。

初めの溢れ出るイメージ、古い映画のコラージュ、引用されたものの豊かさは相変わらずで、ここはおとなしく余計なことは考えずにゴダールの世界に浸っていればいい。

映像は素晴らしく美しいですし。

よくゴダールは難しい、わからないという人がいるけど、わたしなんか元より何も深く考えないから、難しく感じない。溢れ出る(今作品は溢れるほどではないけど)言葉の中の一つに引っかっていると、ゴダールの場合置いてけぼりを食うことになります。

それに今作品は、菊地成孔も言っているけど、あまり捻ったことはゴダールも述べていません。結構まっすぐ前を向いた発言が多く、それはおじいちゃんになったせいかはわからない。

はっきり伝えたい意思がつよかったか…

 

アラブ世界の章が異色な感じで、史実なのか暗喩的な物語なのかよくわからなかった。

アラブ世界には特に疎いから…

しかし、これだけで長編映画ができそうな家族、特に兄弟の物語でした。

 

 

インタビュー記事によれば、もう2作品撮ってゴダールは「映画よ、さようなら」と言うつもりらしい。

夫は若い頃からゴダール好きなのでほとんどの作品は見ている。

わたしは大人になってからというか、かなりおばさんになってからゴダールが好きになったのだけど、まあそこそこ見ている。

うちがちょっと困っているのは「ゴダールの映画史」。

大体ゴダール作品は1時間半ほどのものが多いけど、これは長大で、こっちの体力知力はゴーダール爺さんよりそもそもの基準が低いのに、低下は早いので、なかなか挑戦する気になれません。

でもどんどん理解力も感性も落ちて行くわよねえ…

どうしたものか。

 

ゴダールや、この後見に行った横尾忠則など、やはり人並外れた生命と知力のエネルギーを持っているのでしょう。

 

 

この「イメージの本」について菊池成孔の評が面白かったので、コピペしておきます。

 

mikiki.tokyo.jp