家で映画でも〜「最高殊勲夫人」

ラザロさんで頭が『?』になってしまったので、今度はアハハ〜と見られる映画を。

 

最高殊勲夫人

増村保造監督

1959年の制作。

 

増村としては初期にあたる作品です。

 

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右はスチールなので白黒ですが、映画はカラーです。

 

 

週刊明星に連載中の源氏鶏太の同名小説を、「完全な遊戯」の白坂依志夫が脚色、「親不孝通り」の増村保造が監督した喜劇。撮影も「親不孝通り」の村井博。

 

結婚披露のカクテル・パーティ、新郎は三原二郎、新婦は野々宮梨子である。二人は、三原一郎(船越英二)・野々宮桃子(丹阿弥谷津子)に続いて同じ家の同じ兄妹同士の結婚なのだ。三原商事の営業部長対秘書の恋愛結婚が二度繰返されたのだ。ところで、現在三原家には大島商事に勤務している三郎(川口浩)、野々宮家には短大を卒業した杏子(若尾文子)が残っている。桃子はこの二人を結ばせ、トリプルプレイを狙っていた。三郎と杏子は、お互いに恋人があることを宣言、絶対に結婚しないことを誓った。三郎は大島商事社長令嬢の富士子からプロポーズされていたが、杏子には恋人などいなかった。彼女は早速恋人を見つけねばならなかった。桃子の願いを聞き入れ、杏子は三原商事の社長秘書に就職した。たちまち、宇野(小林勝彦)・野村という若い社員が彼女の後を追い始めた。テレビのプロデューサーで、富士子の兄の武久も、杏子にイカれてしまった。

(はい、映画.comからです、カッコ内の配役は私が加筆)

 

 

ビジネスガール、などという言葉が発せられる、昭和34年公開の映画です。

オフィスラブコメ、というような内容。

他愛もない映画ですが、増村独特の乾いた疾走感で、アハハ〜と見てしまいます。

そして、後年演じられるような悪女でもいわく因縁ある女でもない、普通の短大卒業したての若さ溢れる娘役の若尾文子

可愛くて、きれいで、生き生きしています。

 

長女の丹阿弥谷津子は、当時30代前半のようですが、45歳くらいに見えてしまう貫禄。

そのお尻にビッタリ敷かれているのが、船越英二で、はまり役です。もうこの当時からこういう役だったのですね。

 

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上の写真は、社長室で芸者と浮気をしている船越英二

口止め料を秘書になった若尾文子に出している…

これもスチールでしょう、映画中ではちょっと違っていた。

 

 

昭和34年は、今の上皇の御成婚がありミッチーブームに沸いた年だそうです。

岸信介内閣で、所得倍増計画もまだ。

自民党が安保改定要項を決定し、北朝鮮出身の人の帰還第一便が出た年。

経済は上向きになり、三原商事も景気が良さそうで、社内の人間関係も楽しそう。

たあいない内容ですが、一人一人の個性がよく描けています。

娘二人を三原商事の重役に嫁がせながら、黙々と小さな会社の事務を勤めて退職した宮口精二演じる3姉妹の父親も、誇り高く頑固だけどいいお父さん。

満員電車で出勤し、狭い化粧室で三密になってメイクを直し、男性社員にずずいとアピールし、割り勘でとんかつを食べる「ビジネスガール」の生態も活写。

増村の登場人物だから、というのもあるでしょうし、時代もあるでしょうけど、誰しも元気でよく飲み、よく食べ、よく恋をします。

いかに有望な男性社員をゲットして、安定した主婦の座に落ち着けるかが、当時の女性社員の共通の目的、価値観だったのでしょうし、それまでの間「腰掛け」で十分楽しもうということのようです。

 

さらには、現代先取りみたいな、手広くいろんなレッスンに明け暮れ、自分探し的なリッチな令嬢も。

その兄で若尾文子にプロポーズする、テレビのプロデューサーも登場しますが、これがカーディガンを肩にかけるようなのっぺりしたヤツで、どうも増村はテレビ業界人を揶揄しているように見えます。テレビのいい加減さ(当時は生放送ばかりだったんでしょう)も描いている。

でも後年増村はテレビの仕事もずいぶんやっているのよね、TBSの「赤い」シリーズとか。

 

 

それはさておき、この「最高殊勲夫人」、明るくて洒落ていてノウテンキで、楽しく見られる作品です。

 

お話はお決まりのパターンで、DVDの表の写真の、二人でウィンクするお茶目なシーンで終わり。