家で映画でも〜「天使の分け前」

プレミアリーグが始まって、よせばいいのに全部の試合をフルタイムで見ると、本当に映画を見る時間がなくなってしまいます。

(そして疲れて、不機嫌になる、何なんだ?)

そもそもアレですよ、ステイホームで外に行けないから、家で映画でも見ましょう、ってことで、映画好きではありますが、やむなく始めた駄文でした。

が、続けて駄文を認めていると、何だかこれも悪くないと自己満足に陥り、ネタがなくなるのはつまんないな…

という心配はまだだいぶ先です。

レヴューを書いてない作品が9本溜まっていて、オペラも「運命の力ネトレプコ!を書いてない。書かないで終わるかも。

今日は、

 

天使の分け前

ケン・ローチ監督

2012年の制作、イギリス・フランス・ベルギー・イタリア合作

 

今更言うまでもないけど、すでに劇場公開された作品には、ネタバレといちいち断る必要を感じていませんので、悪しからず。

 

 

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新型コロナで外出自粛期間中の、わたしの大収穫、ケン・ローチ監督です。

しょうがないでしょ、今までほとんど見てなかったんだから。

 

これはタイトルも素敵で、楽しめる映画でした。

他の人のレヴューを読んで、賛否両論あると知って、ビックリした。

そうなのか、真面目な人が多いんだな…

タイトルの「天使の分け前」は、樽に入れたウィスキーが年に2%だか蒸発していくのを、そう呼ぶのですって。

 

イギリスの名匠ケン・ローチが、カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞したドラマ。スコットランドを舞台に、恋人や家族からも見放されていた青年が、信じられる仲間を得たことで前向きになっていく姿を、笑いや涙を交えて描く。ケンカの絶えない人生を送るロビーは、恋人レオニーや生まれてくる赤ちゃんのために人生を立て直そうとするが、なかなかまともな職に就けず、またもトラブルを起こしてしまう。服役の代わりに社会奉仕活動を命じられ、そこで3人の仲間と出会ったロビーは、奉仕活動指導者でウイスキー愛好家のハリーからスコッチウイスキーの奥深さを教わり、テイスティングの才能が開花。仲間とともに1樽100万ポンド以上する高級ウイスキーに人生の大逆転をかける。脚本はローチ作品おなじみのポール・ラバーティ。

(いつものように映画.com)

 

スコットランド英語でまた聞き取りにくい…のはともかく。

映画の入り方は、「わたしはダニエル・ブレイク」などと同じようです。

法廷のよそ行きの英語で、登場人物の行った犯罪について述べられていきます。

主人公ロビー(ポール・ブラニガン。写真の右から二人目。小柄だけど快足サイドアタッカーみたいな←)は、目をつけられているワルに吹っかけられた喧嘩で、相手をボコボコにしてしまった罪。

写真にある4人とも警察官に逆らって騒ぎを起こした、だの、女子は万引きしたインコの尻尾がバッグから出ていて見つかっただの、そんな連中で、刑務所に行く代わり、社会奉仕活動を申し付けられる。

冒頭で彼らが紹介され、社会の底辺で日常的に犯罪と貧困の中にいることがわかります。

その社会奉仕活動の指導者ハリー(ベン・ヘンショウ)がとてもいい人で、(奉仕活動の)ペンキ塗り作業の基本どころか、社会生活の基本すら知らない連中を束ねて仕事をさせ、親身になってくれます。

ロビーは何とかまともな生活がしたいのですが、恋人の父親からは「お前は絶対ダメなやつだ、金をやるから娘と別れろ」と言われ、怪我させたワルには常につけねらわれている状態。

テーマは重いのですが、この作品ではユーモアも交えて、軽めに描かれています。

 

ハリーが大のウィスキー好きで、ロビーにも飲ませると、何とスコットランドの青年なのに飲んだことがなく、初めは何だこの味?とびっくりする…どうも、スコットランドといっても、ビンボーな若者の飲む物ではないようです。

しかしロビーはテイスティングの才能があることがわかってきます。

すごく舌と鼻が良いらしい。後から頭も良いとわかります。

 

怪我をさせたワルの一人と絡んで、ロビーは危うくまた暴力を振るいそうになり、ようやく自制できたのですが、このままではいけない、と新たな道を探ります。

 

そこに、ある有名蒸留所で非常に年代物のスコッチウィスキーの樽が発見されたとのニュース。

それがオークションにかけられれば、1億円4000万円ほどの値がつくって、東京の(旧)ナビスコカップ優勝賞金より高いんだとさ。お酒を全く飲めないわたしには想像できません。

で、ロビーは一計を案じ、仲間と、いつものチンピラっぽい格好じゃアレだからとキルトスカートを着て、オークションのある蒸留所へ行きます。

 

このオークションのシーンはケン・ローチの風刺が効いていて、樽の中身を知っている視聴者はつい笑ってしまいます。

バカ高い樽を競り落としたのは、アメリカ人のお金持ちで、早速利き酒をすると、「何と素晴らしい」とか感激するわけです。

 

しかし、本当の年代物のそれは、ロビーたちが持ってきたなんかよくわからないけど、安いお酒かジュースかなんか(それがわかればもっと面白いのかも)の瓶に入っている。

イタリア人のちょっと怪しげなこともしていそうなバイヤーに売って、彼らは大枚を稼ぎます。

 

ロビーはイタリア人の紹介で蒸溜所で働くことになり、ハリーに粋なプレゼントと、とても素敵な手紙を残して、妻子を連れて去っていきます。

 

さて、彼らの行末はどうなるのか、映画はここでハッピーエンドです。

 

 

ロビーには才能があることがわかったので、きっとうまく行くでしょう。

あとの連中は悪銭身につかず、になってしまうかも。

 

エンドマークから先のことはともかく、社会からも家族からも見捨てられたような若者が、何かきっかけがあればごくまともな生活ができると、ケン・ローチ監督のエールが聞こえる作品です。

4人のアホな会話とか、いつもの警察官にからまれたところとか、笑ってしまうシーンも多く、ウィスキーの質は変わらないのだろうか、とか突っ込みどころはあるにしても、とても気持ちよく(気持ち悪いシーンはあるけど)見られる作品でした。