入院中に読んだ本、3冊。

入院中、たくさん本が読めるかと思いきや、ほんとに具合悪い時は読書どころではなく、

少し良くなってきても「はい、ふうちゃんさん採血です〜」「ふうちゃんさん、点滴です〜」

などと落ち着かず、結局読了したのは3冊でした。

スマホDAZNのサッカーはダイジェストとフルで何試合か見ました。

一番痛快だったのは、スパーズがマンUをコテンパンにやっつけたやつ。

ベッドの上で「ウヒャヒャヒャ」と笑ってしまった〜

 

で、読んだ本は、以下の3冊。

 

「鏡の古代史」辻田淳一郎著。

これが割と入院中に向いていた。

入院中は、まずあまり血生臭い、残酷なのはいやだし、難しすぎるのは読みにくい。

この本あたりがシロウト向けに書かれているけど古語や難読漢字などもあって、睡眠導入効果もあり。

遺跡や古墳から出土したり、神社などに伝わってきた古代の鏡の研究を通して、1世紀から6世紀までの歴史、特に鏡に象徴される権威のあり方と伝播の流れなどが書かれています。

ざっくりいうと、学校で習った古代史よりも、鏡の出土状況などから見える歴史は、意外と緩やかで、ものすごい権力を持った首長が「国」を治めていた、というよりは、ある地方で物流などのまとめ役的な人、集団同士が緩やかに結びついていたものだと。

その中心は弥生時代の九州から、古墳時代の大和へ移っていき、本格的な国と言えるものは、6世紀古墳時代後期に形成されていく。

後代の中央集権的な大和政権のイメージで、それ以前の首長を見るのは違うようです。

古代鏡の分類や時代区分などは、シロウトの私には睡眠導入剤になってしまったけど、鏡を中国から入手し、あるいは製造して、それを与えることで、権威を認められると同時に、鏡を受け取った地方の首長にも権威が備わるという構造になったとか。

そうなんだ〜それにしても、また古墳を見に行きたくなった。

箸墓とか。

 

 

「くっすん大黒」町田康著。

           

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町田康のデビュー作。

バランスの悪い大黒の置物を捨てようとするところから始まる、訳のわからん話。

主人公は例によって情けない男で、中年太りでだらしなくなった姿を抱え、さも臭いそうな格好で大黒を捨てようとウロウロする。

その様を、ついのせられてしまうような良いテンポで描いています。

「河原のアパラ」も収録されていて、こちらはもう少しエグい。

気持ち悪い描写があれこれ、入院中にはちょっとアレだけど、つい面白くて読んでしまいました。

どちらも臭いが紙面から漂うようなので、胃の具合の悪い人には向かないかも。幸いわたしは胃はなんともなかったので。

 

 

「ブルックリン・フォリーズ」ポール・オースター著。

 

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2012年いつもの柴田元幸の翻訳で刊行されたものの文庫版。

妻と離婚し、肺がんに罹り、治療後にもうあとは余生だ、と感じた中年男ネイサンが、知己のいないブルックリンに住み、自分のドジやミスなど思い起こし「人間愚行(フォリーズ)の書」を書き綴っているうちに、甥と思いがけず再会してから、どんどん意外な出来事が起こっていく、という話。

 

うちの本棚にはラノベがほとんどなく、「ヘノベ」(ヘヴィーノベルね)ばかりなのですが、町田康とかこのオースターの小説などは、かなりライトな方です。

甥のトムも、ネイサンもそれぞれに挫折や失敗や、人に言えない過去を持っている(でも言ってしまう)、ちょっと変わった人物もいるけど概ね普通の市民が登場します。初めのうちは人との関わりには消極的だったネイサンが、お話が進むにつれて、関わりを深め、自分も、周りの人も、幸福になるよう力を尽くすようになる。

ポジティブで明るい気持ちになれる作品ですが、その最終盤では、2001年9.11が迫っていることが示され、やはりオースター、ただのハッピーエンドにはしてくれなかった・・・

しかし、だからこそ、その幸せを噛み締める美しい情景が、一層価値あるものだとも感じます。

オースターの作品は読みやすいので、入院中とか通勤中とかに向いています。

 

 

以上、3冊でした。

退院したら、全然読めなくなった。どうしてかな?