「アジアのなかの日本映画」四方田犬彦

たいていの人には面白くない記事ですので、スルーしてくだされ。

古い話になりますが、今年の4月にレッドクリフⅡ」を見ました。
もちろんⅠも見ています。なにしろ赤壁の手前で映画は終わってしまったのですから、
次を見ないわけにはいかないのです。
しかし、もともと「三国志」には疎くてⅠにもさほど深い共感はなかったため、
どうしようかな~DVDになってから見ようかな~でもあの迫力はスクリーンで見ないとね
などと考えている時、この本を読んだのでした。

イメージ 1


2001年刊行、ずっと以前に買って、立川のウチの本棚に寝かしていたものです。
本は寝かしていると熟成することもなく、紙魚が湧くだけなのですが、なんとなく読み忘れていました。ところが、この著者の「日本映画史100年」(2000年刊)を何気なく読んでとても面白かったので、これが寝ていることを思い出したのでした(そのくらい積ん読が多い)。
で、「アジアのなかの日本映画」を読んだら、これはジョン・ウー作品「レッドクリフⅡ」をやはり見なくちゃということになりました。

理由は、それに気がついていた人には簡単なこと。
わたしはず~っと以前アジアの某国に住んでいましたが、その頃TVではさかんに古い香港映画を放送していました。それが日本映画によく似ていて、どことなく無国籍、どことなく日活ぽい・・・などと感じたものでした。
その頃現役の映画界では、いわゆる香港ノワールというような「男たちの挽歌」などが流行っていて、そのスター、チョウ・ユンファが小林旭にそっくりなのにもびっくり。
(ついでにツイ・ハークの初期作品などもTVで見てその暗さにまたびっくり。どこかATG映画に通じるものも)
そんなイメージを持ったのも、考えれば当然で実は香港映画界は日本映画からかなりの影響を受けていたのですね。
「アジアのなかの日本映画」によれば、
ハリウッドのギャング映画の影響→日活のアクション映画→香港のフィルムノワールジョン・ウーなどのハリウッド進出
・・・という流れになるわけです。
そうかそうか、わたしが似ていると思ったのもそりゃ当然か、と頷きつつ「レッドクリフⅡ」を見に行く気分が盛り上がったのでした。

ここでは「レッドクリフⅡ」の感想を書くつもりはありません。

「アジアのなかの日本映画」、なぜ8年も読まないで放り出していたのか、後悔しました。8年間少し賢くなるチャンスを逸していたわ。
ここには戦争をはさんで、アジアと日本の映画人の交流(好むと好まざるとにかかわらず)、アジアのなかで描かれた日本、日本のなかに描かれたアジアの人々などが記されています。日本映画人の気骨ある人、時代の風潮にうまく合わせた人など。
すでに知られてはいますが、原節子の小津映画のヒロインから想像されるにはほど遠い戦前のやくどころ・・・彼女自身の奇異な生き方など。

それをいうと驚く人も多いのですが、わたしは黒澤明作品では「白痴」が好きなのです。
ここに登場する原節子などは、本当は彼女もともとのイメージなのかも。

それはともかく、アジアと日本とはいまだにデリケートな問題があって、この記事にも書くのは控えますが、四方田はそこを的確に押さえています。
この問題での大島渚は日本映画界で特筆すべき存在です。「絞首刑」を最近見直しましたが、やはり彼の鬼才ぶりには圧倒されました。
病に倒れたのは残念でなりません。もっと多くの日本人が見ないようにしている問題にライトをあて、白日にさらし、笑い飛ばしてほしかった・・・。

そんなことを考えさせられた評論集でした。
我ながらお粗末な感想ですが、疲れたのでおしまい。