僕たちのキックオフ

注意・バカ長いので、暇な人だけ読んで下され。
映画のストーリーがほとんどわかるので、これから見る人は読まないように。

誰が決めたかシルバーウィーク。
おかげさまで、早起きしなくていいから夜はずっとプレミアリーグを。
結果・・・ガナーズはウィガンに4-0で勝ち。今節は一応力の差を見せました。
圧巻はマンチェスターダービー。マンCの選手たちやはりお高いだけのことはあります。しかし、試合を決めたのはワンダー(元)ボーイでした。

あれ?こんなこと書くつもりでは・・・

少し前になりますが、NHKBSで見た新作映画について。
映画館で見てこそ映画だと思うので、TVでは100%見たとは言えませんが。
アジアン・フィルム・フェスティバルに出品されたものをBSでも放映していたので
いくつか見ました。
アジアやアフリカの作品を見る機会は少ないので、こうした映画祭はありがたいし、TVでやってくれると不精なわたしには、なおありがたいです。
詳しくは↓


この「僕たちのキックオフ」は、イラクのシャウキット・アミン・コルキという73年生まれの監督、長編2作目。

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舞台はイラクキルクーク。ブッシュさんが「大量破壊兵器がある」と言ってイラクで戦争したときにたびたび聞いた名前の、確か激戦区でした。
映画でもすっかり破壊された街の様子、住むところを失ってサッカースタジアムで
避難生活をする人々などが映し出されます。
そこで主人公の青年がアラブ人、クルド人、あと何人だったっけもう忘れた、
対立している民族の少年たちを集めて、荒廃したスタジアムでサッカー大会を開くという話。
青年の弟はサッカー好きだったはずだけど地雷で片足を失い、生きる希望をなくしている。サッカー大会は弟を励ます目的もあったのでしょうが、弟には返って辛い思いをさせたようです。
作品は青年と隣家の娘との恋、荒廃した街、人々の暮らし、友情などを、厳しい状況にありながら、なんだかの~んびり、ちょっとユーモラスにセピア色の画面に描いています。
しかし、物語は甘い終局を迎えることはなく、現実の厳しさをいきなりたたきつけられて、平和な日本の一室で寝そべって見ていたわたしは肝を冷やされることになりました。

ちょうどこの映画を見る前に、木村元彦著「蹴る群れ」を読み終わったところでした。

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この本の始めにイラク代表の記事があります。木村元彦という人は、アメリカ的「常識」や「正義」から排除されたような国々の人々に目を向けたルポを多く出していて、わたしなども日本のマスコミから得た知識のいかに偏っていることか知らされることがあります。
イラクについてもそう。

イラク代表といえば・・・思い出さずにはいられないのが、「ドーハの悲劇」。
あの時、誰が言ったのか「彼らは、負けると帰国してから、厳罰に処せられるから頑張るのだ」と、聞いたことがあり、フセインの独裁体制だからそんなこともあるだろうと思ったものでした。恥ずかしいけど、わたしのような無知なオバは報じられたことを確認する術はないのです。偏見とは気がついていないから偏見なので、わたしも悔しさもあって、イラクに対して好感は持ち得ませんでした。
今ならもう少しサッカーそのものを冷静に見られると思いますが、当時の日本代表に対する思いは、今の比ではありませんでした。
(FC東京の選手もいなかったのに・・・ヘンなものです)

映画はほんのひとかけらの希望も残して終わります。それはサッカーの試合中に見られたものでした。青年のしたことは無意味ではなかった・・・前途は明るくないにしても。

イラクでは映画制作に対して脅迫めいたこともあったそうです。一部には映画など異教の娯楽だという思想の持ち主もいるのでしょう。でも、この作品を見る限り、イラク人もまた、家族や恋人やサッカーを愛する人間に違いないと、ごく当たり前のことに思い至ります。