悩ましい話~その1.Jリーグ2ステージ制

長文ですので、お忙しい方はスルーしてくださいまし。
 
9月14日の浦和戦、試合後に浦和ゴール裏には、リーグが2015年から導入すると言う2ステージ制に反対を訴えた多くの段幕が掲げられました。
FC東京側には一人同趣旨のゲーフラを掲げたサポが見られましたが、組織だった反対表明はありませんでした。
その後、FC東京の阿久根社長の、以下のようなファンに対するメッセージがHPに掲載されました。
FC東京サポは読まれたでしょうが、全文掲げます。
 
「2013.09.21 【ファンのみなさまへ】 Jリーグ大会方式変更について
いつもFC東京に熱いご支援・ご声援を頂戴し誠にありがとうございます。
9月17日(火)のJリーグ理事会で2015シーズンよりJ1リーグの大会方式を2ステージ制のリーグ戦およびスーパーステージ・チャンピオンシップに変更することが決定いたしましたが、決定に至るまでの経緯およびクラブとしての考え方をご報告いたします。

<決定に至る経緯>
この決定については昨年6月からJリーグ内に設けられたカレンダータスクフォースという組織で大会日程に関する検討がされ、形を変えて戦略会議としてJリーグのあり方や将来について議論されました。そして成長戦略会議でポストシーズン制の検討がなされ、最終的にはJリーグ実行委員会での討議・審議を重ねて今回の理事会での今回の決定に至ったもので、Jリーグをより良くしたいというJリーグ関係者や実行委員の課題認識・解決方法・想いが詰まった結果と受け止めております。もちろんJリーグから日本サッカー協会にも適宜報告・相談しながら進めましたので、日本のサッカー界としての決定と考えております。

<FC東京ファン・サポーターのみなさまのご意見>
これまでスタジアムをはじめ様々な場面で、FC東京ファン・サポーターのみなさまから「2ステージ制反対」のご意見を多数いただき、私は「ご意見として承り、実行委員会でお話しいたします」とお答えしてまいりました。

<Jリーグでの検討経緯>
みなさまに一番ご理解いただきたいのは、現在Jリーグが抱える課題認識です。
好きなスポーツは何ですかという関心度調査もJ1リーグは2006年45.4%であったものが2011年34.8%と明らかに減少傾向にあります。またご来場者数も同様に減少傾向にあり、FC東京で言うと2010年25,112人が2012年23,955人、今年は現時点で23,686人となっております。加えてリーグ・クラブ共にスポンサー企業が集まらず、FC東京においては大きなクラブスポンサーの撤退を余儀なくされております。加えてここ数年は約100名、すなわち3チーム分の優秀な国内の選手がさらなる飛躍を求めて海外に羽ばたいており、この傾向はこれからも続くと考えられます。

こういったことに対しては、ゲームの質を上げるためのプラスクオリティプロジェクトや、スタジアムの環境整備、有名な外国籍選手の獲得、国内若手選手の育成体制に向けた強化、そして人気回復のための地上波での露出増など、さまざまな対策を戦略会議・実行委員会などにおいて考えてまいりました。

一つ大きな問題は、こういった対策を実施する原資が今のJリーグにはない、見込めないということです。イギリスではプロリーグがプレミアリーグとして独立する際、有料放送と契約し大きな放映権料を獲得、有料放送局のキラーコンテンツとして成功を収めましたが、すでに多数の無料放送が定着している日本では同じような方法で収入を増やすことは困難です。またアメリカのように自治体やファンドがスタジアム環境を整備してくれるといったことも今の日本には当てはまりません。他国の成功事例の対策導入も研究しましたが、すべてが当てはまらない現状において、ひとつの方法として「大会方式変更」という案が出ました。

各国の様々な事情における大会方式を研究し、その上ですべての実行委員から出た当初の意見は「現在の1シーズン制が最も年間王者を決定するにふさわしい方法」というものでした。「ファン・サポーターのみなさんもそれを望んでいる」という意見を、私を含めた各実行委員が述べたのは言うまでもありません。ただ一例としてクライマックスシリーズの導入を行った野球界は、それがすでにファンの方にも受け入れられる形となっていること、新しいスポンサーを獲得していることを考えると、Jリーグも大会方式の見直しも視野に入れて考えざるを得ないとも思いました。

当然、この対策はベストの対策ではありません。現時点で考えられるベターな選択だと認識しています。従ってこの対策の実施経過を見ながら、更なる進化を求めて日々考え実行に移していかねばならないと感じております。

今Jリーグは改革の時を迎えているというのはリーグ・実行委員・各クラブ共通の認識です。ぜひみなさまにもご理解いただき、新たなスタートに向かって一緒に戦っていただきたいと考えます。

加えて、大東チェアマンや中西競技・事業統括本部長がこれまでも様々な媒体を通じてご説明しており、これからさらにみなさまにわかりやすく説明することとなりますので、それらの情報をお聞きいただきたいと思います。」
 
 
というものです。
 
わたしはJリーグが2シーズン制から1シーズン制になったとき、やれやれやっとまともなリーグになったわ、と安心したものでした。
アルディレス監督の時の清水エスパルスが、年間勝ち点で1位なのに、2ステージとも2位だったので優勝できなかったということがあり、2ステージ制の不合理は既に経験されていました。
それをまた2ステージにするんだそうです。
そう決定した経緯は阿久根社長が述べているようなところでしょう。
 
いつも試合のたびにサポと握手、ハイタッチして迎えてくれる阿久根社長の立場は理解しますが、ともあれ、わたしは2ステージ制には賛成できません。
エスパルスが被った理不尽さは、多少は解決の道を探っているようですが、そうだとしても、
年間勝ち点1位=優勝、でなくてはおかしいとしか言いようがありません。
 
しかし百歩譲って、Jリーグが目先の利益増を狙って2ステージ制にして、PO(スーパーステージ・チャンピオンシップとやら)をやるのはいいとしましょう。
わたしは昨季のJ1昇格PO決勝を国立競技場で見ましたが、確かに両チームのサポーター以外のサッカー好き?も多数来場していました。目を血走らせたジェフと大分のサポ以外の物見遊山のような野次馬のような人々が多くいました。でも彼らがその後、ジェフや大分のファンとして結びついたとは思えません。
また、日本代表の試合には5万人とかの観客が集まりますが、Jリーグでは東京対浦和で3万5千人ほど。代表好きのJリーグ無関心層を、チャンピオンシップでリーグに結びつけることができるのかしら?疑問です。
スポンサーで言えば、多分チャンピオンシップを地上波で放送できれば、スポンサーがついて、多少の放送権料も入るのかも知れません。
少しばかりの利点としては、そういうことでしょうか。
 
ここで視点を変えて見ます。
わたしには2ステージ制が良いとは思えません。が、J1チームのサポで2ステージ制に反対している人からは、おそらく残留争いするチームへの視点はあまりないのではないかと想像します。
城福監督の2ステージ制へのコメントとして「残留争いをしているチームは、2度も優勝争いしている相手と戦わなくてはならなくなる可能性がある」という趣旨のことばがありました。降格は年間の勝ち点で決まるとしたら、フェアではないのではないか?ということでもあると思います。
またクラブの力も格差が広がるかもしれません。
2ステージ制にしてしまったら、1シーズンを通してチームを育てるなどということは後回しになり、1ステージ後に財力のあるクラブは補強をすることになるでしょう。すると、こつこつと選手を育てていた弱小クラブから、いっぺんに主力を引き抜かれてしまうようなことにならないでしょうか?このあたりもよく検討しないと、クラブ格差が広がって、つまらないリーグになりかねません。
 
では結局のところどうしたらいいのか?
と、そんなに良いアイデアはありません。
当面の利益をちょっとでも得たいのなら、2ステージ制も効果があるかもしれません。
しかし結局は、わたしたちの子どもの頃からしたら、隔世の感がある子どもたちの競技人口の広がり、ここから自分の身近なヒーローとして地元のチームを応援する子どもが育って行くのを、待つしかないように思います。
TVで香川(出場していれば)も、長友も見られる時代で、おそらくそれがJリーグに2流のイメージを与えているのかも知れませんが(実際のところは、Jリーグでも劣らない部分もあります)、チームのサッカースクールや地元での活動を地道に行うことが早道なのでは、それがサッカー文化を根付かせることではないかと思うのですが・・・おそらく、そんなこともわかっていながら、この2ステージ制の決定だろうとは思うのですが。
 
もう一つ。
Jリーグに検討してほしいのは、ACL出場クラブへの配慮です。
今回の柏は本当に気の毒です。広州恒大とは、力の差もあったとは思いますが、これを見て、「うっかりACLで勝ち上がると、リーグ戦が大変だ」と思ったクラブは、ますますACLに消極的になり、アジアで勝てなくなるのでは?
もちろんCL出場クラブは強行日程をターンオーバーしながら乗り切っていますが、それこそまだJリーグにはその力がないのではないかと思います。やはり何らかの優遇措置が必要かと思います。
 
さらにもう一つ。
配慮してほしいのは、J2のプロヴィンチァのチームに対する援助です。
地元のヒーローとしても、環境が整わなくては辛いもの。
まずは当該クラブの努力が必要ですが、まっとうな努力をしても難しいクラブもあるでしょう。
特に人口が減少している地方などは、クラブ経営も大変だろうし、そうなると選手もなかなか揃わず、チームは強くなれず、悪循環に陥ります。
J2サポの旅をすると、負けて悔しくてもう行きたくない場所もありますが、それでもどのプロヴィンチァも魅力がありました。
それこそが日本にほんの少しずつ根付きつつあるサッカー文化ではないかと思います。
チャンピオンシップで浮かれるのもまあ良いとしますが、まずその小さな根っこを枯らさない努力が、先々に実ってくるのではないかと、やや楽天的かもしれませんが、そう思うのです。