「孤高の守護神 ゴールキーパー進化論」

昨日は、アジアカップオーストラリア大会の日本の初戦、パレスチナ戦がありました。
パレスチナチームは難しい状況にある中、ようやく出場がかなったということです。そういう相手に恵まれたこともあり、まずは勝ち点3を取りました。
GKは川島でしたが、ピンチの少ない試合でしたから誰がGKでも良かったとは思います。
ただ一度、ハイボールの処理に危なっかしいところがあり、もっと強い相手になったらどうか心配になりました。

それはともかく。
試合でGKに一番興味を持って見る人って、そんなに多くないと思うけどどうかしら?

わたしは、サッカーを見始めた頃は、GKにはほとんど興味なし。
今もGKにそんなに深い関心はありません。
が、去年のW杯ブラジル大会では、GKの活躍が目立ちました。ノイアーなどに見られるように、GKもまた新時代に入ったのかも。

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で、これを読んでるのです。
著者はジョナサン・ウィルソンというイギリス人ジャーナリスト。
フットボール黎明期から150年にわたって登場する、各国のゴールキーパーたちについて書かれています。

まだ全部読んでないんだけど。
初めの頃、いくらトシヨリでも知らない選手ばかりで、読みにくいってこともあり。
半分まできたら、やっと知ってるゴールキーパーが次々出てきて、読み進めるようになりました。

聞いたことはあったけど、黎明期のゴールキーパーは、一番ヘタクソで一番ひ弱でしょうがないヤツがやらされるポジションだったのですって。
権ちゃんが聞いたら気を悪くしそう。
でもサッカーそのものが今とはずいぶん違っていたから。
ゴールキーパーだけでなくフィールドプレイヤーも手を使って良い場合があったとか。
ゴールキーパーの手を使う範囲も時代と共に変化して、だんだん狭くなって今のようになったそうで。
だいだいペナなるものも昔はなかったそうです。じゃ、PKもなかったのかな?

巻頭に歴代有名ゴールキーパーの写真が載っていますが、衝撃なのはウイリアム・フォルクって選手。
今なら絶対ありえない、わざわざ出っ張ったお腹を強調して横向きを撮った写真、すごいおデブ。
よくこんなでやれたと思うけど、チェルシーにいたんだって。その時167キロあったとか。

結構少なくない数の選手の零落した末路とか、いろいろビックリさせられました。

で、4章の後半にカンポスが出てきて、ようやく記憶にはっきり残っているゴールキーパー登場。
思えば、カンポスの功績は、派手なユニを着て目立つことで、わたしのようにゴールキーパーに無関心だった観客の目を引きつけたことだったかも。
ラテンアメリカで「エル・ロコ」(イカれた奴)と呼ばれるゴールキーパーたち(どういうのがエル・ロコかは本を読んでね)の一人。
もう一人有名なのはチラベルトトヨタカップにも来たし。
それから実際のプレーは見たかどうか覚えていないけど、コロンビアのレネ・イギータというゴールキーパーは、麻薬王エスコバルモリーナとの争いに加担させられ、モリーナの娘誘拐に関わったと。このニュースは聞き覚えがあります。

5章にはブラジルとスコットランドゴールキーパー、両国ともゴールキーパーに対する評価がやたらに低い国だそう。
スコットランドの事情はよく知らないけど、ブラジルは去年のW杯を見ても、やっぱりディフェンスはお留守になっちゃうのかな、と思います。でも、大会前からドイツと当たるまでは、さすがのブラジルも守備から入るのねと思ってたんだけど。
テクニックを楽しませるブラジルフットボールを阻害するゴールキーパーが、ブラジルで評価されないのはわかるような気がします。

この本によれば、人種差別的発想ではあるけど、ブラジルサッカーの基盤になる精神が黒人とムラートに由来するものなので、それを阻害する立場のゴールキーパーは白人であるべきだ、という考えの人もいたとか。

しかし、最初に海外で有名になったのはジャグアレという黒人のゴールキーパーだったそうです。
そして、1950年のW杯ブラジル大会の時も、バルボーザという黒人のゴールキーパーでしたが、決勝でウルグアイに負けて、その後それはそれは気の毒な目にあったと。
いわば国賊扱いされたってことかしら。
W杯アメリカ大会、BBCがブラジル代表のキャンプ地を訪れるバルボーザを撮影しようとしたら、パレイラ監督のアシスタントだったマリオ・ザガロに「悪運がつくからキャンプに入るな」と言われ、
バルボーザは「ブラジルでは最長の懲役刑は30年だが、私は50年服役している」と嘆いたのですって。
可哀想…
彼以降、黒人のゴールキーパーを置くことが、代表でもクラブでも難しくなったそうです。

2000年、彼は貧困のうちに亡くなりました。

バルボーザ後、1999年にジーダが代表ゴールキーパーになるまで、49年間セレソンで黒人のゴールキーパーはいなかったそうです。

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そのジーダならば、覚えている人が多いのでは?
そう、あの「マイアミの奇跡」で、やっちまったゴールキーパーです。
まだ現役みたいですね。
しかし当然ながら、バルボーザにしても、ジーダにしても、そのミスだけで評価するのはフェアではないですね。
ちなみに、日本人ゴールキーパーで、わたしが初めに印象に残っているのは松永、次にそのマイアミの川口能活ですから、いかにゴールキーパーには無関心だったかバレバレです。
今もフィールドプレイヤーほどには注目してない気がするけど、ゴールキーパーが良い試合は締まった試合になるとは思います。

で、アギーレさん、次は西川か東口を使ってみたらどう?