「フェイス・オブ・ラブ」と「奪命金」

国際線の飛行機に乗ったとき、どんな映画を見るか?
わたしはほとんどアジア便しか乗ったことないので、よく見るのは香港ノワールか、大当たりしたけどわたしは見てないような作品、たとえば「ロード・オブ・ザ・リング」とか。
(気をつけないと、いよいよ佳境ってときに着陸態勢に入って見られなくなる。わたしは、隣の若いアメリカ人男性が、あの主人公のホビットがリングをさあどうする!という瞬間に着陸態勢のため画面が消えたのを目撃した。彼の落胆ぶりは、通路越しにも伝わってきた~)
あるいは、な~んも考えなくてよさそうな映画。


以下、2本。
機内鑑賞向きです。


有楽町スバル座のタダ券があるので、たまに見に行きます。
ニコール・キッドマングレース・ケリーを演じた「グレース・オブ・モナコ」とか。
タダじゃないと見に行かないだろうけど、タダかと思えば結構楽しい。ニコール・キッドマンは魅力的ですし。

「フェイス・オブ・ラブ」もそのタダ券で。

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たとえば、この映画を見た仲良し二人のオバ、エトウ さみえ(57歳)とワン山 栄子(58歳)だったら、こんな会話になるかも。
「亭主がいなくなったら、そりゃしばらくは悲しいけどセイセイするわよね~」
「だけど、やっぱり生活に困るわよ、旦那の収入ないと~」
「そーよね~、このニッキーってさあ、お金には全然困ってないし、娘と彼氏の関係心配するくらいで、たいした悩みもなくて、ダンナが死んでた~っぷり悲しんでいられるんだもんね~」
「ふつうはそれどころじゃないわよ、生活が大変で」

と、まあ想像してみました。
かなりスノッブな雰囲気の映画。
ヒロインニッキーのオシャレなおばさまファッションと、演じるアネット・ベニング、彼女の夫と夫にうり二つの男を演じるエド・ハリスの演技を見る映画という感じ。
でもいくらなんでも、ありえない~もし亡くなった夫そっくりの男とつきあったら、娘の反応が一番普通だと思う。
それでも二人の俳優の演技力のおかげで、ラストに近いシーンではちょっとばかり感動します。

ともかくタダなら高くはありません。



20117年の香港映画、ジョニー・トー監督の「奪命金」。
こちらは、スカパーで見ました。

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こちらは、大変面白かった。
香港らしい作品でスピード感もあり、まだ香港も元気だなあと。
2011年だから少し前ですが。

香港というと、最近はアンブレラ・リボルーションの報道が多かったので、「治安、大丈夫なの?」という人もいますが、そのさなかに行ってた夫も何も危険なことはなく、わたしも心配はしていませんでした。
むしろ香港の若い世代の方が、日本の同世代より健全なのではないかと思います。
あまり詳しく述べるのは差し控えますが。

それはともかく。
ギリシャ債務危機をきっかけに広がった金融危機を背景にしたこの映画。
成績のよろしくない銀行員テレサ、成績を上げないとクビになりそうなので、世間知らずの年金生活オバチャンをほとんどだまくらかして、その名も「一攫千金」というハイリスク商品を契約させます。
落ちぶれた香港ギャングのパンサー、刑事チョン、この3人それぞれ違う意味でお金に悩まされているのだけど、その金融危機とある事件がからんで・・・というお話。
パンサー役のラウ・チンワン、香港映画が好きな人なら誰でも見たことがあるでしょう、実に達者でなんでもできる俳優です。
この映画の彼も、まかりまちがえばおそろしい上海ヤクザに殺されそうなところを(現に彼の兄貴筋は、金満上海ヤクザらしいやり方で殺されてしまった)、笑っちゃうようなすり抜け方で、結局幸運をつかむ役どころを、面白く演じています。

ちょっと強引にハッピーエンドになりますが、これも香港映画らしくて好き。
良くも悪くも「大陸の人」がからんでいて、これはアンブレラ・リボルーションの伏線にもなっているものです。
刑事チョンが捕まえる年寄りの殺人犯の述懐、彼も大陸から香港へ出てきて、その時盛んだった産業、繊維工場だったりオモチャ工場だったりを転々として生きてきて・・・とか言う言葉、実にリアリティーがあります。

競争が激しくて、映画のトシヨリのように敗残の人生をおくる人もいるけど、何より自由であることが香港の価値だろうと思います。