世界報道写真展2015と「セバスチャン・サルガド\地球へのラブレター」

毎年見に行っている「世界報道写真展」。
恵比寿の写真美術館が改装中のため、今年は池袋の芸術劇場で開催されました。
報道写真ですから、毎年世界中で起きた恐ろしい紛争や事故、災害、社会問題などが多く取り上げられているので、楽しいとは言いにくい。しかし美しい写真も多く、残酷な有様が写し出された写真も、見るべき意味と価値があります。

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今年大賞に選ばれた作品は、マッズ・ニッセンというデンマークの写真家が撮ったロシアのゲイのカップルの写真。
レンブラントみたいに美しい写真です。

衝撃的だったのは、イランで撮られた一連の写真。
公開死刑の場面、喧嘩の末に相手を殺してしまった男が、犠牲者の遺族の手により、縛首にされるところ。イランの法では、遺族が犯人を平手打ちにすれば、許しのしるしになるのだとか。被害者の母親らしき女性が、犯人の頬を打ち、犯人が許される。叫び声を上げる目隠しされた犯人。相手を許して涙にくれる母親。
旧約聖書の世界のような(旧約聖書にこういう律法はありませんが、コーランを読んだことないので)、言いようのないドラマが写されていて、否応ない衝撃を覚えます。

地中海に浮かぶ難民船を真上から撮ったものも、美しい紺碧の海に、色とりどりの服を着た人々が立錐の余地なく乗っていて、一見きれいな写真ですが、すぐにその恐ろしい現実に気づかされます。

そして、世界中に相変わらず紛争による殺人が。
人の為す事、変わらず、むしろ悪くなっている…
それでも、写真家の切り取った四角の中には、美しい景色や生き物や人の営みを見る事ができます。

著作権などあると思うので、ポスターだけコピーしました。


池袋から渋谷に行って、映画「セバスチャン・サルガド\地球へのラブレター」を見る。
こちらも写真家のドキュメンタリー、監督はヴェンダース
ヴェンダース作品も久しぶり。

サルガドを知らなくても、アフリカ、ルワンダ紛争の虐殺が行われた教会内部の恐ろしい写真といえば、思い出す人も多いのでは。死屍累々とはこのこと。
サルガドもこの取材で精神的にまいってしまったそうです、

彼の述懐と、どれもすばらしいクオリティーの写真と、彼自身の生き方を重ねて、見ごたえのある作品。

人間はいつまでも憎み合い殺しあうという絶望的な事実に、打ちのめされたサルガドでしたが、彼の妻が始めた、故郷ブラジルに緑を再生させるプロジェクトに関わることで、希望を見出して映画は終わります。

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ブラジルは時々、巨人というか、スケールの大きな人を生み出します。

写真のように、ヴェンダースもちょっと顔を見せる。
元気で何より。

ドラマは撮らないのかな?