ボッティチェリ展 東京都美術館

先日会期が終わるというので、慌てて行ってきました、ボッティチェリ展。
上野駅に着いてまずビックリ。
公園口の改札が大渋滞~
まさかみんなボッティチェリ展に行くんじゃないよね?
なんてボケたことを言いながら、ようやく改札を出て、そうか、桜か。と、気がつく。
呑気なのはいつものこと。

いろんな国の方々が、まだ5分咲きくらいの桜、開花の進んだ枝の下に集結。
それを横目で見て、東京都美術館へ。

花見ほどではないにしてもここも混んでました…もっと早く来るんだった……

小品が多かったので、混み合っている中で見るにはかなりしんどい。


ところで混んでいる美術館で絵を見るマナーですが、スタジアムの待機列、行列のできるパン屋さんの列などちは違います。
そういう一般の列と同様に考えている人が結構いて、いちいち作品の前が空くまで並んで待っています。
すると、ますます渋滞。
美術館内では、自分のペースで他の人を抜いて見てもいいんだけど~
館内の係員もそう呼びかけていました。
無理やり前にねじ込んで入ったりしなければ、問題ない。
以前ある美術展で、わたしが前のおば様集団を抜かして行こうとしたら、舌打ちされ、肘でブロックされた~~肘打ちはイエローカードよ。



それはともかく。
日伊国交樹立150周年記念、ボッティチェリ展。

公式HPによると。


サンドロ・ボッティチェリ1444/45-1510)は、優雅で美しい聖母や神話の女神を描いた画家として知られます。その作品は多くが板に描かれ、きわめて繊細であるため、まとまった数の来日はこれまでに叶いませんでした。日伊国交樹立150周年記念として実現する本展は、フィレンツェをはじめ世界各地から20点以上ものボッティチェリ作品を集め、その画業を一望する大回顧展です。

フィリッポ・リッピの工房で修業を積み、生涯のほとんどをフィレンツェで過ごしたボッティチェリは、メディチ家の画家として名を馳せ、大型の祭壇画から私的な神話画まで、幅広い主題の絵画を手掛けました。同時代の芸術家たちが、遠近法や明暗法を駆使した自然主義的な表現に向かうなか、ボッティチェリは中世美術を思わせる装飾的、象徴的な様式を貫き、独自の絵画世界を作り上げます。本展においては、初期から晩年までの宗教画、神話画、肖像画を通して、ボッティチェリ作品の特徴と魅力を紹介するとともに、師のフィリッポ・リッピや弟子のフィリッピーノ・リッピの作品をあわせて展示し、15世紀フィレンツェにおける絵画表現の系譜をたどります。






というわけで、フィリッポ・リッピ、フィリピーノ・リッピの作品や、ルネサンス当時の工芸品、メダル、ロレンツォ・イル・マニフィコの胸像なども来ていました。

リッピつったらイタリア代表監督だよな、広州恒大だよな、と、またやくたいもないことを思う。

しかし、マルチェロではなくて、フィリッポとフィリピーノの親子です。
お父さんのフィリッポの作品は、どことなく古拙な感じもあるけど、聖母子の情愛が描かれたような印象。それよりこの人、修道僧のくせにお盛んで、尼僧との間にもうけた子がフィリピーノだそうです。
ルネサンスっぽい。

作品は、ボッティチェリが群を抜いて端正。

息子フィリピーノは、甘美で、女性ファンが多そう。


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今回の目玉「書物の聖母子」
すばらしく美しい絵でした。
どの作品も保存状態が良くて、色鮮やか。
書物は聖書で、イザヤ書が開かれているそうです。個所はどこか忘れたけど、9章かしら。
幼子イエスが手に持つのは、3本の釘とイバラの冠。
死と再生の象徴ザクロも描かれ、受難と復活を暗示。
マリアの憂い顔は、ボッティチェリの特色でもあります。

この隣に展示されていた聖母子と洗礼者ヨハネも印象深い作品でした。
磔刑を暗示する構図です。
隣で見てたインターナショナルスクールのローティーンらしきグループ、「でかいベビーだな」と言ってたけど、おおむね聖母子のキリストは実際の赤ちゃんより大きいのよね。
やっぱり描かなきゃいけないところを描くと大きくなるのか。
キリストの偉大さを描こうとしてそうなるのか、わかりませんが。


ボッティチェリは最盛期に「春」や「書物の聖母子」などを描き、その後サヴォナローラの影響を受けて、さらに信仰的というか、サヴォナローラの教えに従った絵を描くようになります。
サヴォナローラについて本を読んだことがあるけど、イタリアルネサンス期に乱れた風潮やメディチ家の専横を批判して、キリスト教徒のあるべき姿を激しく解いた僧、と記憶しています。
そのサヴォナローラの熱弁により、一時はメディチ家も追放されてしまいましたが、復権したメディチ家により火刑に処せられたある種の革命家でした。
サヴォナローラ影響下のボッティチェリ作品は、あまり面白くなくなったと感じます。
教えを視覚化しようと詰め込んだせいか、バランスの悪い絵になってしまったし、禁欲主義のせいか、あまり美しくもなくなって…
フィリピーノ・リッピにもサヴォナローラ影響下の「マグダラのマリア」という作品があり、これもビックリするほどエグいものになっています。卒塔婆小町みたいな老いさらばえたマリアの絵。
お人形みたいな絵がいいわけではないし、醜くてもすばらしい絵はあります、たとえばゴヤの犬とかサテュルヌスとか。
しかし、リッピ息子のこの絵はあまり良いとは思えなかった………なぜか考える余裕もなく混んでいたので、このあたりで終わり。


もっとゆっくり見たかった……
「バラ園の聖母子」などもとても美しい絵だったけど……人気作品の前はやはり人垣がすごくて、こりゃウフィツィ美術館に行かなきゃダメか、と思ってしまいました。

でも、サッカー係数高くて海外旅行は無理。
隣のオジ様が「へー、これが本物か~~へえええ。本物を見られるとはね~~」と、何度も呟いて(結構大きな声で)いたけど、そう思って感謝感激するのが良いかもしれません。