カラヴァッジョ展

上野の西洋美術館へ「カラヴァッジョ展」を見に行きました。展覧会は今月12日に終わっています。


ついでに「伊藤若冲展」も見ようかと思ったら、これがもうすごい混みよう。
いったい列の最後尾はどこかわかんないってほど延々と伸びて・・・そらもう赤戦の待機列も負ける。
3時間待ちとかなんとか・・・
根性なしのワタクシ、すぐに諦めて、比較的空いていた「カラヴァッジョ展」だけ見ました。
しかしなんでこんなに混むんだろうね、伊藤若冲さん。いつのまに人気者に?


カラヴァッジョも2001年に来て庭園美術館でやったのを見ています。
今回も同じ絵がいくつか来ていました。「法悦のマグダラのマリア」もそうですが、今回はカラヴァッジョの真筆であるとのお墨付きで来日。
真贋はともかく、大変に深く引き込まれる作品であることに違いはありません。

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その時と同じく、カラヴァッジョの影響を受けたカラヴァッジェスキたちの作品も展示されていて、それは今回の方がわたしには良かったように思います。ジョルジュ・ラトゥールは好きだし・・・彼はカラヴァッジェスキには入らないと思うけど、確かに光と影の美しい作家です。
でも2001年に来たえぐすぎる作品も、一見に値するかも。名前は忘れたけど、あまりの趣味の悪さにどんな絵かはしっかり記憶に張り付いてしまったもの・・・

で、本家カラヴァッジョの作品。
ポスターになっているワイングラスを持ったバッカスなど、「うまいでしょ」と言わんばかりの絵で、静物画というジャンルを開いたような作品です。
わたしが好きなのは・・・


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「エマオのキリスト」。

これは好きな絵ベスト10に入る。
十字架刑で死んだイエスが復活して、エマオという村に向かう道で弟子たちの前に現れ、エマオ村の宿で食事をともにしたという聖書の場面。
テーブルについているのがイエスと弟子2人、立っているのは聖書には登場しないけど、宿屋の主夫婦でしょう。
エスは2人とともにパンを食べて見せ、預言通りに復活したことを示します。
その場面を、押さえた色調で非常に静かな感動のうちに表現しています。
この絵、カラヴァッジョがさんざん悪さをしでかしたあげく、とうとう殺人まで犯して、逃げ回っていたとき描かれた作品。
こういうなにか紙一重の人、家族や友達にはほしくないけど、人間としてとても興味深い。
こんな気高い絵を描くとは殺人者とは思えない、というより、気高さと粗暴さが同じ人間の中にある、ということが真実で、興味をひかれてしまう。
展覧会では、彼の裁判記録なども展示され、レストランでアーティチョークの料理にクレームをつけてなんだかんだ、とか、切れやすい性格だった証拠が今日まで残ってしまいました。それもこれも、素晴らしい作品を残した画家だから、ですけど。

でもこんな人、長生きできるはずもなく、「法悦のマグダラのマリア」というこれも傑作を手元に置いて、逃走のあげく39歳で病死します。
亡くなったのは1610年だから、日本では関ヶ原の合戦の後、江戸幕府が出来てまもなく、というところ。

国立西洋美術館の紹介記事をお借りします。

ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ(1571-1610 年)は、西洋美術史上最も偉大な芸術家のひとりであり、イタリアが誇る大画家です。彼の理想化を拒む平明なリアリズムや、劇的な明暗法によって浮かび出る人物表現は、バロックという新時代の美術を開花させる原動力となりました。彼の画法はイタリアのみならずヨーロッパ中からやってきた画家たちによって熱狂的に継承され、その影響はルーベンスラ・トゥールレンブラントなど、17世紀の数多の画家たちに及んでいます。
本展は、イタリアの代表的な美術館が所蔵するカラヴァッジョの名作11点と、彼の影響を受けた各国の代表的な継承者たちによる作品を合わせた計51点を展示します。「風俗」「五感」「光」「斬首」といった、カラヴァッジョの芸術を理解するために重要なキーワードに従って章立てを構成し、彼の芸術の革新性と継承者たちによる解釈と変容の過程を検証します。また、裁判や暴力沙汰といった彼の生涯をしばしば波立たせた出来事を記録した古文書など、同時代史料も併せて出品し、カラヴァッジョの人生と芸術両面におけるドラマをご紹介します。


作品数としてはちょうどよく、楽しく(楽しい絵は少ないけど)見ることができました。