「徳は孤ならず 日本サッカーの育将 今西和男」と、Vファーレンを思う。

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TOWER RECORDSの商品紹介です。






森保一風間八宏高木琢也小林伸二上野展裕……。
サンフレッチェ広島Jリーグ初のGMを務めた今西和男の薫陶を受けた選手から、数多くの「名将」が輩出するのはなぜか。そして、請われてGM、社長まで務めたFC岐阜から、志半ばで去ることになった裏には、何があったのか。
手がけた選手のすべてに心を砕き、クラブを通じて地域貢献に尽くす……。Jリーグが創設され、発展していく過程で、驚くべき手腕を発揮して、サッカー界の人材を育てた男。少ない予算の地方クラブながら、Jリーグ有数の強豪となったサンフレッチェ広島の土台を築いた男。その軌跡と数多くの教えを『オシムの言葉』の著者、木村元彦が描く。
人材育成とは何か。プロフェッショナルとは何か。この男の巨大な足跡を知らずして、日本サッカーを語ることはできない。


わたしは今西和男という人を、この本を読むまでほとんど知りませんでした。
実は、「岐阜で経営に失敗してクビになった人」くらいの認識しかなかったくらい。
日本サッカーリーグの頃は蘇我夫は見てたけど古河ファンだったし、わたしはあまり興味なかったし・・・父が見てた試合を一緒に(昔は家にTVが一台しかなくて、家族で同じ番組を見てたのさ)見たことがある程度だから、まして広島のチームには全然関心もなく、今西さんも知らなかったのです。
なぜ読もうと思ったかといえば、今西さんへの関心というよりは、著者木村元彦への共感があった、と言った方が。
オシムの言葉」の著者木村元彦の著書には、ストイコヴィッチの故国ユーゴについて書いた「悪者見参」、「終わらぬ民族浄化 セルビア・モンテネグロ」などもあります。これらを読んで、非常に考えさせられ、当時日本の報道でながされるニュースの多くは、アメリカ側の情報操作によって偏ったものだったと知りました。それをわたしもほとんど無批判に受け入れていたことに気づかされ、TV画面に映し出される映像と流される言葉をなんとたやすく受け入れてしまうのか、と自分のバカさに驚いたものです。むろん現代の争いは情報戦の要素が大きく、ある意味でまったく混じりけなく公正な報道なりレポなりができるかどうかは、わかりません。情報の出し手の立ち位置や、本の著者の価値観で切り取られた「真実」であるとは思います。
それでも、より真摯に伝えているものはどれか、と見ると、木村元彦の立場はその本を書くことが生業であっても、彼を信用できると、わたしは感じています。

そういうバルカン半島に関するレポの姿勢を見て、また、未見ですが「争うは本意ならねど」で我那覇の巻き込まれたドーピング問題を取り上げたことを見ても、この今西さんについての記述は信用できると思いました。
さらに、SNS上で今西さんが岐阜を追われた背景にあるものが、Jリーグのライセンス制だと言われているのも見たので、これはゆゆしき問題だ、と思ったのです。

4歳で被爆するという過酷な幼少時から、高校でサッカーに出会い、猛烈に仕事をしながら(高度成長期の真面目な日本人の代表のよう)、サッカー選手になっていく。
怪我のため引退したあとは、あきれるほどの面倒見のよさ、無骨だけど深い思いやりと、打算のない誠実さで多くの人材を育てた。
サンフレッチェからどんどんいい人材が育つのを見て、本当に羨ましく思っていましたが、この今西さんがその土台を作ったのでした。

この本には東京ゆかりの人たちも出てくるので、そういう興味もあります。
森重も広島の出身だから、ジュニアユースの頃の姿で登場。

多士済々といったところだけど、本題は、FC岐阜を志半ばで追われた、恐ろしいというかいやらしいというか、その事件です。

Jリーグクラブライセンス制そのものが悪いのではないのだけど、これには大きな欠陥がある。
ライセンスという印籠を振りかざし、クラブ運営にJリーグのある人間が介入したというのが重大問題。
(その張本人は、この本が書かれた時には、Bリーグの要職に収まりかえり、もう一人は連絡がとれなくなっていたとか。)
クラブライセンス交付にあたって、公正なチェック機関がまるで機能していなかった、というか同じ穴のムジナだったと。

彼らの目に、頑固一徹背筋のなっすぐな今西さんは煙たい存在だったのか、今西さんが社長に招聘される以前の負債から何からおしつけて辞めさせ、血も涙もなく追い払ってしまった・・・
しかも岐阜県知事が、印籠にへへ~っとなる代官みたいに腰抜けだった。知事が毅然としていればどうにかなったのに。

終戦で、サポは今西コールを送り、李漢宰の夫人が泣いて今西さんが辞めるのを悔しがった、というエピソードもあり、わたしももらい泣きしてしまいました。


村井さん、ダゾーンどころじゃないわよ。
Jリーグが中から腐ってきてませんか?

今西さんのためにも、Jリーグのファンのためにも、真面目にサッカーやってる選手のためにも、きっちり検証して・・・くれないんだろうな・・・


さて。


「徳は孤ならず」を読了してまもなくのこと。

東京は、せっせと元代表とか得点王とかを移籍獲得し、大丈夫?お金あるの?昨季ずいぶん観客動員減ったみたいだけど?と、心配になったり、昨季優勝すると言って、戦力ダウンのまま城福さんに何もかも押しつけ、今季はそれに懲りたか、この大補強、ACLのあった昨季にもっと考えたらどうだったのよ、と思ったり。
でも、優勝するなら、特に広島や鹿島やガンバのように「成功体験」がないクラブが、優勝を狙うなら、お金をかけることと知恵を絞ること、両方必要です。
知恵の方はちょっと心配だけど、気がつけばピーター・ウタカも取ったし、お金は相当使ったようです。
しかし、神戸がポルディを獲ったと発表したおかげで、東京の散財・・・かどうかはまだわからないか、東京の大補強もあまり目立たなくなってよかったよかった。

そうかと思えば。


今西さんと一緒に岐阜を追い出された服部さんが、GMをしていたVファーレン長崎が大変なことに。
服部さんはすでにGMを辞職していますが、社長も辞めるとか、しかもこのままじゃ給料遅配、来季はJ3降格かというゆゆしき事態に。
この服部さんは今西さんの声かけで岐阜に来た人で、もとは東京ガスサッカー部から、東京の育成部門に携わっていたそうです。と、「徳は孤ならず」に紹介されていたし、長崎のGMになるとき、Jリーグの例のヤカラから邪魔されたこともあったというので、長崎ではうまくいくようによそながら願っていました。
ところが。
こういう事態になってしまって、服部さんがどういう人なのかはわからないけど、残念です。
いろいろと社長に関する悪い情報も流れていますし、どうなっちゃうのかしら。
ただ、長崎が特別好きなわけではないけど、いいえ、かりに大嫌いなクラブだとしても、フリューゲルスのようになくなってしまっていいわけはないのです。
ぜひとも、こちらも検証して、立て直してほしい。

何にしろお金の要る話ですが、それ以上に正しく賢くお金を運用すべき話です。
どうか長崎が来季もJ2でできますように、万一J3に落ちても(J3も楽しいのも事実だけど、こんな理由で落ちたくはないよね)、なくなったりはしないで、立ち直れますように。
東京は、秋には今季の大補強が正解だったと喜べますように。クラブもそれなりに賭けに出てはいると思います。

う~もともとお金の話は苦手なのよ、10万円以下の話じゃないとわからない。
頭が痛くなった・・・
ともかく、日本サッカーに大きな貢献をされた今西さんが、このままではあまりにも気の毒で、どうにか報われてほしいと願っておしまいにします。