吉備津神社にちなんで「吉備津の釜」ふうちゃんP4版(備忘録)~浮気心が難を呼ぶの巻。

いやもう誰も読まないってことは重々承知してはいますけど、やりかけたからほっておくのも気持ち悪くて。
なんて、誰に言い訳しとるんじゃ。

え~~上田秋成吉備津の釜」、ふうちゃんP4ふうに訳してみたら、思ったより長くて3回目。

バカ息子正太郎は、女房騙して、浮気相手の水商売女お袖と出奔、お袖のいとこ彦六のやっかいになるも、なにやらお袖は、原因不明の病にかかり、あっけなく亡くなってしまいました。


正太郎は泣き伏して、お袖の逝ってしまったあの世を恋しく思うけれど、魂を呼び戻す方法を知るすベもなく、故郷を思えばかえってあの世よりも遠く感じられ、にっちもさっちもいかなくなり、昼はただふとんにくるまってねて、夜ごとにお墓に参って見ると、早くも草が茂り始め、虫の声も悲しげに聞こえる。我が身一つの秋にはあらねど(古今集大江千里)、でもボクほど悲しい人なんかいないもんね、と思っていると、どうやら同じように嘆く人がいるようで、並びに新しい墓が立っていた。その墓にお参りする女が、世にも悲しそうな様子で、花を手向け水を注いでいるのを見て、「ああ気の毒に。あなたのような若いひとが、こんなに寂しい野原をさまよい歩いていらっしゃるとは」というと、女は正太郎を見て「わたしくが夕ごとにお参りにきますと、あなた様がいつも先においでです。さぞかし離れがたい方とお別れになったのでしょう。お心うちをお察しして、悲しく存じます」と、さめざめと泣く。正太郎が言うには、「そうなのです。十日ばかり前に愛しい妻を亡くしましたが、この世に残されても何も心引かれることはなく、ただこの墓に参ることをせめてもの慰めにしております。あなたもさぞかしそういうお心うちでしょう」女が言うには、「このようにお参りしておりますのは、ワタクシがお仕えしていたご主君のお墓でして、ここにご埋葬いたしましたのです。残された奥方様が、お嘆きのあまりこのごろは難しい病気におなりになりましたので、このようにワタクシが代わりに御花をお供えに参っております」正太郎は、「奥様がご病気になられるのも、ごもっともなことです。さて、故人はどのようなお方で、どこにお住まいでしたか」と聞くと、「主君は、この国では由緒ある家の方でしたが、人の讒言にあって領地を失い、今はこの野原の隅に寂しくお住まいになっています。奥様は隣国まで評判になるほどの美人ですが、ご主君はこの奥様のことで所領を失われたのでございますよ」と語った。すると正太郎は、その身の上話に同情したというよりは、「奥様が美人」に鼻の穴がふくらんで、「そ、それで、奥様が寂しく暮らしていらっしゃるのは、この近くですか。お訪ねして、同じ悲しみを語り合いましょう。連れてっておくれ」と言う。「家はあなたのいらっしゃる道から、少し奥に行った方です。奥様は心細くお暮らしですから、時々おいでになって下さい。きっと待ちわびなさいますよ」と、先に立って歩いた。


10日程前に駆け落ちした相手を亡くした男ですが、浮気の虫のエネルギーってすごいですな。
奥様が美人、由緒ある方の美しい未亡人、つう言葉で、もうすっかり元気になってる正太郎。
スキップしながら侍女のあとをついて行くけど、大丈夫かな~~~
まだ会っていないのに「待ちわびますよ」って少しヘン・・・


220メートル位行くと細い道があり、110メートルほど歩くと、薄暗い林の裏に小さい草葺きの家があった。竹の編み扉も物寂しい感じなのに、七日の月の光が明るく差し入って、狭い庭が荒れているのまで見える。細い灯火の光が窓の紙からもれているのもなにやら寂しい。「ここでお待ちください」と言って侍女は中に入った。苔むした古井戸の辺りに立ってのぞき見ると、唐紙が少し開いている。隙間風に明かりが揺れて、黒塗りの棚がきらめいて見えるのもいい感じに見える。侍女が出てきて「あなた様のご訪問をお伝えしましたら『お入りください。屏風越しにお話し致しましょう』と、部屋の奥から端の方にお出になりました。どうぞそこにお入りください」と言って、庭の植え込みを回って奥の方に正太郎を連れて行く。客間を人が一人入るくらいに開けて低い屏風を立てていて、古い打ち掛けの端がのぞいているあたりに、主がいると見える。正太郎はそこに向かって、「頼りないお暮らしの上に、病にまでおなりになったそうですね。ワタクシも愛しい妻を失っていますから、同じ悲しみを語り合いましょうと、あつかましくもお邪魔致しました」という。すると、主の女は、屏風を少し引き開けて、「ああ、やっとお会いできましたね~ワタクシがどんなに辛い目にあったか、その報いを思い知らせて差し上げましょう~」と言うので、驚いて見ると、故郷に残した磯良ではないか。顔色はひどく青ざめて、だるそうなどろんとした目つきもものすごく、正太郎を指した指は青く血管が浮き出たさまがそれはもう恐ろしく、「ぎゃあああああっ」と叫んで気絶してしまった。



出ました。
こわいよう。
いい気味だけどね。

まだ終わらないわ、続く。