つぐない

原作は読んでいませんが、文庫で2冊になるこの長編をなかなかの
手腕でジョン・ライト監督、まとめていました。
この人の前作「プライドと偏見」も観ていません。
どうもオースティンが苦手で・・・
イギリスの小説あまり読みませんが、読むならニック・ホーンビイとか・・・
どちらかというと、フットボールサポの階層で・・・。
「つぐない」もお得意の階級社会問題がからんでいて、
なんとなくオースティン風の香りがします。
配給会社では、少女の嘘に翻弄され、愛を貫いた恋人同士、
というような宣伝をしていますが、実際は、
小説家となった夢想家の少女の話です。
結局彼女は生涯つぐなうことができず、小説の中でつぐなおうとします。
老いた作家となった彼女はそれが真実だ、といいます。
実際には書かれたことが事実であろうとなかろうと、
それでつぐなわれたことにがならないでしょう。
小説家とは作家とはそういうものだということだと思います。
おそらく原作ではそのあたりがもう少しはっきり書かれているのでしょう?
映画では、少女の潔癖さ、
成長した彼女の思いつめた表情などよく描けています。
特に少女時代のブライオニー役の子は、演技といい姿といい、印象的でした。
ラストシーンは、わざとあのように、絵空事ふうに撮ったのでしょうか。
生涯つぐなうことができないまま、それを忘れてしまうかもしれない
病を負った老小説家の、思いでしょうか。
原題ATONEMENTは、「贖罪」「あがない」と訳すべきで
本ではそうなっているようです。
これはキリスト教的なことばで、心の中で「あの時は悪かった」と
後悔したり、反省したりすることではありません。
言い訳なしで、自分の罪を認め、相手に心から
謝罪しなければまりません。
ブライオニーで言えば、映画の場面にあった謝罪の場面を
実行しなければなりませんでした。
その観点に立てば、小説家はわかっているようですが、
何もしていないのも同然です。
このあたりの贖罪意識、日本人には特に苦手なところなので、
この映画も本当のところ、理解しにくいかもしれません。
さらに、その贖罪することができなかった小説家を小説にした
作者、彼も面白いと思います。