「オレンジの呪縛」

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またまた長文になってしまいました・・・スルーしてくださいまし。

このタイトルを見て「ああ、去年はボコボコにやられたからなあ・・・」と思った人はFC東京ファン?
でも、このオレンジは元祖!オランダ代表です。
デイヴィッド・ウィナー著、原題は
"The Brilliant Orange"
帯に(写真は帯を取って写してしまいました)「ルート・ファン・ニステルローイ絶賛」とあるけど・・・
文中に彼が登場するのはほんの少し、もっとも印象的なエピソードは
ファン・ニステルローイについて、ヨハン・クライフが「彼は二流の選手だ」と評したというもの。
ほんとに読んだのかな?それで絶賛したのだとしたら、ファン・ニステルローイもなかなか・・・

著者はアーセナルサポの、おそらくユダヤイングランド人でしょう。
56年生まれだから、ガナーズが今のようなオシャレなフットボールをする以前からの
根っからのガナーズサポ。
彼が実に多くのオランダ人、フットボール選手関係者のみならず、ジャーナリスト、
建築家、芸術家、評論家などにインタビューしてまとめたもの。
オランダのフットボールとそれを作り出すオランダという土壌、歴史的社会的環境を俯瞰しながら、
またオランダフットボールのすばらしさと限界に集約していく内容です。
なかなかに面白いサッカー文化論でした。
副題は「オランダ代表はなぜ勝てないか?」
実際、遠く離れた日本にいるわたしも、何回「今大会こそオランダはいけるのでは?」と期待し、
準々決勝とか準決勝でがっかりさせられたことか。

オランダ人にとって最大のトラウマとなっている試合は
1974年7月7日ミュンヘンでのワールドカップ決勝、西ドイツ戦。
オランダチームは、70年チャンピオンズカップと74年UEFAカップを制したフェイエノールト
71~73年チャンピオンズカップを3連覇したアヤックスの選手からなる豪華なメンバー。
クライフ、ニースケンス、ルート・クロル、レンセンブリンク、ハーン、ファン・ハネヘム・・・・
監督はかのリヌス・ミケルス
優勝しかあり得ないような顔ぶれだったのに、西ドイツに負けてしまったのでした。
わたしには、この試合の記憶はありません。
それでもいつの間にかクライフ、ニースケンス、クロルたちに
なにかあこがれのような気持ちをもっていたものです。
とくにクライフのような天才を要しながら、世界大会で勝てないオランダ代表。
それはなぜなのか?
一応それがテーマですが、著者はオランダの歴史や地理、文化に至るまで視野を広げて
興味深いオランダ論にもなっています。
わたしが特に面白く思ったのは「オランダ人の考える『スペース』」
フットボールは戦争にあらず」「思考の美」(クライフについて)、「第11番目の戒律」
などの章でした。
最初にあげた章には、フェルメールまで引き合いにだされ、オランダ人の空間把握を述べています。
で、考えたのだけど、典型的なオランダ絵画がフェルメールだとすると、日本では?
一応フェルメールと同時代で考えると・・・江戸元禄期あたり?
狩野元信?菱川師宣見返り美人図」・・・・・・どうもよくわからない。
ただ、絵画におけるスペースの使い方には日蘭に共通点ありと見た。
問題は建築ですな・・・と、どんどん意味がわからなくなるので、やめた。

ともかく、つい去年のユーロでもファイナリストになれなかったオランダを見たところです。
この本はそのユーロの予選までが書かれていますが、
ここで納得いかなかったことが2点。

その①
ワールドカップ、アルゼンチン大会。ここでもオランダは決勝まで進み、アルゼンチンに敗れたのでした。
著者はそのときのアルゼンチンチームをを汚く悪質なファールでオランダチームを痛めつけた
と書いています。
当時の軍事政権下で、ペルーを買収して勝ち点を取ったというのは、ありそうなことだと思います
軍事独裁制の下で国威発揚のための大会のような、イヤな感じをわたしも持ってはいました。
しかし、決勝のアルゼンチンがそんなにひどいチームだったか?
記憶にないのですが?わたしはメノッティさんがアルゼンチンチームをいいサッカーをするよう
導いたと思っていたので・・・著者のいうことがよく分かりません。
その②
終章に著者は今のオランダチームを「愛する人アルツハイマーに罹っているのを見るようだ」と
かなり不適切な表現で評しています。
去年のユーロ予選で苦戦したらしい(見てない)ので、余計そう感じたのか?
それで、あらためてユーロ08グループリーグ、イタリア戦を見ると、
わたしの目にはやはりすばらしいフットボールをするチームなのです。
ヒディングのロシアにころっとやられるところも、お家芸
でも、それまでのオランダの試合ぶりには、ワクワクさせられました。
クライフのいたチームと比べて、だとしたらそもそもムリな比較なのでは?

結局ヨハン・クライフという天才の存在が、いまなおずっしりとオランダフットボール
大きな山のようにのしかかっている・・・ということなのでしょうか?