「舞踏会へ向かう三人の農夫」「幻影の書」「短くて恐ろしいフィルの時代」など

トシをとるとなんですな、目は悪くなる、頭は悪くなる、従って記憶力理解力は低下、しかもトシをとると鈍感力が増すため、感受性らしきものはどんどん薄れてきます。
文字を読むということもメンタルのみならずフィジカルでもヘタになり・・・
と、愚痴から始まりましたが、そんなこんなで「本棚のホコリ」なんてタイトルだから本当にホコリだらけになっちゃった。
 
こんなに読むのが遅いと読んだうちに入らないのでは、と思いますが、一応記録として。
 
ウダウダと抱えていたのがリチャード・パワーズ「舞踏会へ向かう三人の農夫」。
以前読んだ「われらが歌う時」の作者のデビュー作。
これが20代半ばで書かれたとは、なんとまあ恐るべき才能でしょうか。
「われらが・・・」よりちょっと読みにくい印象はありましたが、このデビュー作からしていくつもの物語が重層的に織り込まれ、ひとつのエンディングに導かれる方法は同じです。
諸事情により断続的にしか読めなかったのですが、一気に読めばもっと面白かったでしょう。
 
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表紙にはこの魅力的な写真が掲げてあります。
こちらを見つめるオシャレした3人の青年。この写真から物語は広がり、またこの写真に見せられた一人に収斂していきます。
この3人の運命に付き合って、1914年から現代に至るまでを、ドイツ、オランダ、アメリカまでともに旅しながら、戦争の中で生きた人間の姿を見ることになります。
詳しくは↓
 
ハードカバーは重いので、電車の中では文庫本を読むことが多いのですが、上の本を読んでいた時期には片岡義男「彼女が演じた役」を持ち歩いていました。
原節子の演じた役を時系列に並べて、小津からはずっと後の時代の観客として述べたものです。
原節子の演技の頂点を小津の「東京物語」に置いているのは、当然でしょう。
わたしも「お嬢さん乾杯」ってヘンだな~「ワタクシ、惚れております」ってなんじゃこりゃ?
と思った映画なので、そのあたりは著者と同意見でした。
 
次に文庫本でお気に入り、ポール・オースター「幻影の書」を読みました。
こちらも前掲の「舞踏会・・・」のようにいくつかの物語が重層的に語られますが、遙かに読みやすいものです。
ある事故により心に深い悲しみと傷を負った主人公(詩人で学者で大学の講師だった)が、ある無声映画の監督の生涯を追う話。
最後にもう一度カタルシスに落ちてから再生するまで。
今までの作品よりもっとオースターはストーリーテラーになっていました。
軽すぎず、重すぎず最適な読み応え。
 
直近に読了したのはジョーン・ソーンダース「短くて恐ろしいフィルの時代」。
 
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なかなか洒落た装丁で、本文の側面もオレンジに染めてあります。これにネイビーのブックカバーをつけたらアルビレックスかV.ファーレンみたいになっちゃった・・・
は、ともかく。
これはもうマンガみたいですぐ読んでしまいました。詳しくは↓
 
この手の寓話的な作品というと「動物農場」が代表なのでしょうが、わたしはこれを読んで筒井康隆の「虚航船団」を思い出しました。「虚航船団」は発表当時賛否あったらしいですが、わたしは結構好きでした。
この「短くて・・・」は、それに比べると長さも中編、読み応えも軽く始めから結末も想像できます。
でもなかなか面白い描写があって楽しく、原文で読んでみたい(英語は全然ダメだけど)。
万一拙文でこれを読みたくなる人がおられるといけないので書きにくいのですが、救済に来る某国がなんとなくアメリカっぽい気がして、ちょっと気になります。
 
ただいままたラテンアメリカ文学を読書中。
今週末はBMWスタジアムで「通話」という本を読んでいるオバサポがいたら、ワタクシです~