家で映画でも〜「情婦」

「家で映画でも」シリーズも残り2本となりました。

書き終わったらどうしようかな…東京は感染者が増える一方なので、本当は「Dead don't Die」を映画館で見たいのですが、なんだか心配だし…

またWOWWOWで放送されたのを見るしかないのかな、サッカーの合間を縫って。

イングランドPLはもう少しで終わるので、そうしたらまた家で映画を見る時間も増えるでしょう。

 

 

くどいようですが、ネタバレなど気にしないで書いているので、これから見たい人はご注意を。

 

「情婦」

ビリー・ワイルダー監督

1957年アメリカ制作。

 

50年以上映画制作に携わり、60本もの作品に関わった、巨匠というより、大職人といった方が合う人かもしれません。

 

シリアスな作品も、コメディも多く撮っていますが、これは法廷劇。

アガサ・クリスティーの原作短編小説で舞台化された"Witness for the Prosecution"「検察側の証人」の映画化。

どうしてタイトルが「情婦」になったのかしら?

 

 

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アガサ・クリスティの短編「検察側の証人」の映画化。主演のマレーネ・デートリッヒたっての希望で、監督にはビリー・ワイルダーに白羽の矢がたった。ワイルダーにとっては初の法廷劇だが、彼の作品特有の悪女は今作でも健在。ロンドンで、裕福な未亡人の刺殺事件が起きる。容疑の疑いがかけられたレナードは、ロンドンきっての敏腕弁護士ローバーツ卿に弁護を依頼する。しかし、唯一のアリバイを証言する妻が思いもよらないことを口にし……。

(映画.comより)

 

初見です。

わたしは推理物を考えながら読んだり見たりしない、ただその時に表された事象をふう〜ん、と見るだけのぼんやりした人間なので、アガサ・クリスティという高名な作家の、ビリー・ワイルダーという大監督の映画にもかかわらず、とってもビックリさせられました。

どんでん返しに。

 

ビリー・ワイルダーらしさというか、クリスティの個性でもあるのでしょうが、ローバーツ卿と看護婦ミス・プリムソルの会話は軽妙でウィットに富んでいて、息もぴったり(と思ったら実際の夫婦らしい)。それだけでも楽しめます。

ローバーツ卿が心臓の治療を終えて、退院して看護師に付き添われて事務所に帰るところから始まります。彼の心臓を心配してミス・プリムソルはうるさくあれこれ注意するのですが、ローバーツ卿は聞く耳持たず、葉巻もウィスキーもこっそり嗜んでしまいます。

そこへタイロン・パワー演じるレナードが駆け込んでくる…

ローバーツ卿は体調を案じられながらも、結局葉巻欲しさもあって、引き受ける。

レナードは金持ちのおばちゃんに取り入って、商売にしようと思っただけで、事件に巻き込まれたと主張する。小狡いだけで悪人ではなさそうに見える…

レナードの妻クリスチーネは、彼のアリバイを証言する重要な役。

妻は夫のアリバイを証言できないのだけど、彼女は事実婚なので証言できる、だから「情婦」か…

彼らの馴れ初めはドイツで、酒場の歌手がクリスチーネ。写真のように、美しいおみ足を披露します。

ディートリヒの凄みのあるアルトの声で、それに彼女普通の美人ではなく、ちょっと怖い。

お話の途中までは、彼女が相当の悪女であると思って見てしまいます。

法廷で証言するときの冷酷そうな表情、なかなかすごい。

 

しかし、終盤展開が二転三転する。

 

めでたしめでたしの結審の後、実は…という話が展開します。

善人にしちゃあ油っぽい顔しているな、と思っていたタイロン・パワーがとんでもない奴だった…

悪女っぽさ満載だったディートリヒは、実は愛に生きる女だった。

ローバーツ卿に引き続き弁護の仕事ができてしまったところで、おしまい。

 

 

ローバーツ卿の心臓は大丈夫なんだろうか?

 

汗まみれのタイロン・パワーの顔とか、平然と夫を裏切る(ように見える)ディートリヒとか、愛情溢れるミス・プリムソルとか、それぞれがとてもよく描かれていて、さすが大職人監督だと思いました。

2枚目俳優のタイロン・パワーはこの作品で演技派に名乗りをあげたのに、まもなく44歳で亡くなったそうです。

最後の名演だったのですね。

 

 

さて、このシリーズも最後になってしまった、次はゴダールです。

トリはゴダールで。