徳島旅行1. お鶴に泣き、「人形健」さんにちょっとあせる~
6月22日の試合に会わせて、21日から徳島入り。
台風の影響が心配されましたが、飛行機は定刻に到着。
雨は降っていましたが、台風というより梅雨の雨。
念のためスタジアム用カッパも持って、早速駅に隣接した「徳島城跡」へ。
フットボールの旅では、まずお城を攻略することになっております。
旧徳島城表御殿庭園。
阿波・淡路両国25万石の大名蜂須賀家のお城の庭園。
茶人武将上田宗固の築庭とされる。桃山様式。
枯山水に自然の青石(緑泥片石)で作られた石橋がかけられています。
この大きな緑泥片石が特徴的でした。
公園内に貝塚がありました。
鳥居龍蔵記念館も「文化の森」というところにあるそうですが、今回は行く時間がありませんでした。
お城を攻略(?)してから、初日のメイン「阿波十郎兵衛屋敷」へ、バスで行きます。
徳島市の主な交通手段はバスでしたが、本数が多くないので予定を立てるのが難しい。
うちのような東京郊外では、バスも10分と待たないので、その感覚でいると焦ることになります。
で、「阿波十郎兵衛屋敷」とは?
実在の人物、板東十郎兵衛という庄屋の屋敷です。
無実の罪で処刑されたらしい十郎兵衛をモデルにした人形浄瑠璃が「傾城阿波の鳴門」。
「ととさんの名は十郎兵衛、かかさんなお弓ともうします~」といういたいけな少女のセリフには、聞き覚えのある人も・・・いないか?
屋敷の庭は往時のままだそう。
石を見立てて「鶴亀の庭」と言います。
中庭にある「傾城阿波の鳴門」のお弓と娘のお鶴の像。
かつて阿波の人形浄瑠璃がよく上演された農村小屋を模した建物。
「傾城阿波の鳴門」の上演が始まります。
通しで上演したら長時間になってしまうので、ここは有名なお弓と巡礼となった娘お鶴再会の場面だけ。
とざい、とーざい~。
「巡礼にごほうしゃ~」と、いたいけなお鶴の声。
巡礼の少女が3歳の時に別れた我が子だと気がつくお弓。
追われる身のため、親子の名乗りを上げることなく、心を鬼にしてお鶴を阿波の国に返しますが、後から思い直して追いかけるところでこの段の終わり。
最後に人形遣いの方々が顔を見せて挨拶して下さいました。
この段の後、お鶴は実の父親十郎兵衛に殺されてしまう(我が子とは知らず)ので、理不尽といったらこれほど理不尽な話もないのです。
「トスカ」よりも「リゴレット」よりも理不尽なのですが、それにストーリーなら知っているのに、不思議なものでつい夢中になって見てしまいました。
伝統の力でしょうか。
農村の客席は野外になるような小屋で上演されていたので、見やすくわかりやすくなったようです。
現在でもいくつか農村舞台が残っていますが、毎年上演している舞台は一カ所しかないようです。↓
今度は農村舞台に見に行きたい~
十郎兵衛屋敷入り口。
次に、この近くにある「阿波木偶(でこ)人形会館」へ。
ちょっとケバイ建物を見て夫が「なんか怪しくね?」と、心配する。
「まあまあ、のぞくだけ」と入る。
入館料400円なりを、入り口で女性に払って中を見ると・・・壁にそって木偶(でこ)人形、つまり浄瑠璃の人形が展示してある。これで400円はちょっと高いな、と思っているとその女性が
「ちょっと待っとってくださいよ。いま、おりてきますから」と言う。
おりて?
何がおりるのか?
すると、ドスドスという足音がして、白髪の総髪、眉の太い、作務衣を着た年配の男性がどこかから「おりて」きました。
このお方が人形師「人形健」こと多田健二さん。
今から人形の作り方と遣い方を講釈くださると。
なんかかなりのインパクトに押されつつ
「でも、あの~、バスの時間が・・・3時4分のに乗りたいんですが(ホント)」と言うと
柱時計を指さして「そこに時計があるから、時間になったらわかるけん」みたいなことを仰り、うむを言わさず講釈が始まる~
ちなみに、聴衆はワタクシども夫婦だけ(汗汗)。
人形健さん、ストローをさしたペットボトルと、「のどスプレー」を手元に置いて途切れることなく名調子で語られます。
「人形は桐の木で造る、まずこうスパーンと、大きいでしょ、ここからこうしてこう(ペットボトルをチュー、のどスプレーをシュッ)、だんだん小そうしていく。見たことないでしょ?これが文楽の人形と比べてこんな大きい・・・
・・・人形もいろいろあって、これ見せたら幼稚園の子ども大喜び。刀で切られてあれ~顔がスパーンと、梨切ったみたいに割れるから『梨割り』ゆう(ペットボトルをチュー、のどスプレーをシュッ)、これやったらもう一回もう一回、子ども大喜び。
・・・今日は女性がいるからこれはいかんのやけども、女性もコワイな、怒るとこうなる(と、『角だしガブ』を見せる)、うちのも最近はコワイコワイ(ペットボトルをチュー、のどスプレーをシュッ)
70過ぎたら怒ってばかり・・・まだ時間あるな、まだ大丈夫や。」
と、今度は人形の手をわたしにも動かすように言われ、泣く振りや「オホホ」と笑う振りをさせられ「かわいな~元お姫さん」などと、からかわれ、「まだ時間大丈夫やな」とまたしばらく講釈。
最後はカエルのぬいぐるみを出して「はい、これで帰る」とダジャレまでついた大サービスでした。
なんだかヘトヘトになって外に出たわたしたち。
このお方が「名工」とは、ちょっとビックリですが、けれん味もある人形芝居、作る人にもけれん味があっても不思議ではないか。
中は撮影禁止だったので、HPからお借りしました。
こんなおじさまです。
写真は「酒呑童子」が鬼の本性を現したところを実演中。
この写真では何人も写っていますが、聴衆は最後までわたしたち二人だったのです。
人形健さん、熱演ありがとうございました~
あ、バスにはきっちり間に合いました。
HP↓
徳島には鳴門の渦潮以外にも、見所はいろいろあることがわかりました。