差別的内容の横断幕事件について考える

皆さん既にご存じでしょうが・・・というか、NHKのトップニュースになたくらいだから、普段サッカーを観ない人でも知っている出来事となってしまいましたが・・・
Jリーグの発表は下の通りです。
 
この記事を書くに当たって、はじめは「レイシズムフットボール」というタイトルにしようかと思ったのですが、そんなタイトルにしてしまったら、とても1回や2回では書ききれないし、少しは資料も揃えなくてはならないので、泥沼にはまること間違いなし、と判断してやめました。
 
ですから、これはほんの表面をなぞっただけの、一オバサポの意見です。
 
本ブログでは、政治的思想的な内容は避けてきました。
思想信条を持っていないから、というよりも、ここでは、サッカーを中心に楽しく語り合いたいと思っているので、あえて避けています。
 
今回の某サポが”JAPANESE ONLY"という段幕と日の丸を、入場ゲートに掲げたという出来事、これに関して書くとなると、少しは自分の思想信条にも触れることになるでしょう。
支持できないと思う人もおられるでしょうが、まずは寛容性を持って、気に入らない人はスルーして下さい。
 
Jリーグの処分は、妥当だと思います。
浦和から勝ち点10くらい剥奪してほしかったのですが、逮捕者を出した昨季の清水戦での処分も制裁金(浦和ほどのお金持ちならたいしたことなかったでしょう)で済ませたJリーグとしては、厳しい処分にしたものだと思います。
Jリーグが発表したように、”JAPANESE ONLY"ということばをゲート入り口に掲げたというのは、当事者の意識がどうであれ、弁解の余地のない差別的行為です。浦和側の報告によれば、当事者は「応援の一体感がなくなるから、外国人には入ってもらいたくなかった」とか言ったそうです。この言い訳だけで、じゅうぶん差別意識が現れています。
なんという狭量で幼稚な排他主義か、暗澹たる思いがします。
 
近来、世界的に見ても民族意識が非常に高くなって、他者に不寛容な傾向が大きいことが、広く言えば背景にあるような気がします。
そう思うと、これは浦和だけでなく、どのチームのサポでも起こしうることではないかと、非常に不安になります。
どこでもこういうヤカラはいる、浦和だけが例外ではないと思います。
FC東京では社長が「ファン・サポーターの皆様へ」という一文を掲載し、応援時の禁止事項を見直しています↓
 
 
 
差別意識について考えると、これはまず誰もが「自分の内にも差別意識がある」と、認識しなくてはならないと思います。
そんなことはない、わたしは差別はキライです。
と言うあなたも、わたしも。
 
 
わたしは香港に住んでいたことがあります。
香港は広東語が使われていますが、人間というものはしょうがないもので、必要最低限の言葉を覚えたら、次に覚えるのは、たいがい「悪い言葉」です。
そして、日本人に対する蔑称も覚えてしまいます。
日本に住んでいると日本人が外国でさげすまれた呼び方をされることがあるとは、想像できないかもしれませんが、当然あります。日本人が外国人に悪い呼び方をするのと同じように。
1985年のことだったか、香港スタジアムでサッカー日本代表が香港代表と試合をしました。
夫はスタジアムへ観戦に行き、わたしはTVで見ていましたが、TVのアナウンサーが最初は「日本隊(日本チーム)」と言っていたのが、途中から「俄仔(ガーチャイ)」と言い出し、最後までガーチャイで通したのには、情けない思いをしました。ガ-チャイというのは、日本人を軽くバカにした呼び方です(日本語の助詞『が』が耳障りだということらしい、チャイは子どもという意味)。
もっとひどい呼び方もあります。
民族差別されるとは、こういう気分なのだな、と実感したものでした。
香港人の名誉のために言うと、香港では、多くの人に親切にされて、特に幼子を連れているとみんな親切で、それは日本より子育てしやすい環境でした(遊び場にはちょっと困ったけど)。今も香港は大好きです。
ただ、そんな場所でも日本軍の記憶は強く残っていて、日本の教科書問題やことあるごとに反日感情は高まりました。日本代表戦もそんな時期に行われた試合だったと記憶しています。
 
こんな長話を書いたのは、誰でも差別されることがあると同時に、誰の内にも差別意識はあるということを言いたかったのです。
差別意識は無知から始まると思います。
わたしも、おそらく無知ゆえに誰かを、どこかの国の人を、受容できないないことがあると思います。何かの機会に知識を得て、それに気づかされるでしょう。知ることは大切です。
 
 
差別意識の問題には、想像力の欠如も関わっています。
いじめと同じで、当事者にその意識がなかったり、あってもそこまで相手が辛い思いをしているとわからなかったりします。(悪質な場合はわかっていて行うものもいて、相手が苦しむのを期待するような残酷な人間もいるのが恐ろしいところですが、ここでは多少なりとも人間をポジティブに考えてみます。)
 
浦和の例の段幕を掲げたサポもそれを見て、誰がどう感じるか、想像もしなかったのでしょう。おそらく、それを見てイヤな思いをする人がいるくらいは承知の上で、そう感じる人を排除する目的でやったのかもしれません。しかし、それ以上の深刻な影響を及ぼすとは想像しなかったに違いありません。
彼らの愛する(こんな愛情は選手も迷惑でしょう)浦和にも、槇野や阿部のように海外でプレーした選手は、日本人故の不利益や不快感を味わったことがあるかもしれません。代表の長友や、イタリアから帰った森本なども、どれほど酷いことを言われたか、わかりません。それと同じ思いを、他の人にさせる行為だったのですが、彼らにはわからないのでしょう。
 
世界的に見ても、フットボールには民族意識を高めるような、あるいは排他的にさせるような暗部があります。フットボールの罪ではない、とも言えますが、フットボールにはそういう危険な要素があることも、認識した方が良いと思います。
一方で、勇気や希望を人々に与えることができる、なにより楽しいものでもあります。子どもはサッカーをしながら、友だちと助け合って試合をすること、相手をリスペクトすることを学ぶこともできます。
 平凡な結論ですが、フットボールは世界の共通言語でもあり、暗黒面もあることを認識しながら、特にJリーグは子どもも女性も楽しめるという良い部分を大切にしたいと思います。


長文になってしまいましたし、まとまらなかったのに、まだ考えていたことの半分も書けなかったし、表現できませんでした。
 
でもきりがないからやめる。
 
もしも、こんな長い駄文を最後までお読み下さった方がいらしたら、ありがとうございます。
 
 
参考図書
「悪者見参~ユーゴスラビアサッカー戦記」木村元彦
ディナモナチスに消されたフットボーラー」アンディ・ドゥーガン著
「狂熱のシーズン~FCヴェローナを追いかけて」ティム・パークス著
 
他にも多数ありますが、思いつくだけ、著者やタイトルが確認できるものだけを挙げました(読んだそばから忘れる汗汗)。
 
 しつこく追記…ちなみに85年の香港戦は、香港ペースで進む中、ハラヒロミのヘッド、木村和司のPKで日本が勝ち、香港市民の怒りを引き起こし、日系デパートが投石されたりの小規模な暴動となりました。夫は、香港人のふりをして、事なきを得ました。