こんな時には家で映画でも〜ボイス・オブ・ムーン

わたしは「そして船は行く」がフェデリコ・フェリーニの遺作だと思い込んでいたのですが、この作品が最後だったのですね。

 

ボイス・オブ・ムーン

フェデリコ・フェリーニ監督

1990年制作

 

イタリアの田舎町を舞台に、月の声を聞こうとする愚か者と周囲の人々が繰り広げるお祭り騒ぎを、空想と現実をないまぜにして描く フェデリコ・フェリーニの「インテルビスタ」に続く監督作品。製作はマリオとヴィットリオのチェッキ・ゴーリ兄弟、脚本は エルマンノ・カヴァッツォーニの「狂人たちの詩」に発想を受けフェリーニ、カヴァッツォーニとトゥリオ・ピネリの共同、撮影はトニーノ・デリ・コリ、音楽はニコラ・ピオヴァーニ。出演はロベルト・ベニーニ、バオロ・ヴィラッジョほか

 

 

 

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言わずと知れたフェリーニの作品ですが、これもわたしは未見でした。

それで最後に見た「そして船は行く」が遺作だと思い込んでしまいました。

「そして船は行く」もあまり世評はよろしくなかったのですが、わたしは大好きな作品で、貶す奴がいたら喧嘩しちゃうからね、ってくらいお気に入りなのさ。

そしてこの「ボイス・オブ・ムーン」もいろんなサイトの批評を見るとかなり散々…

確かにもう少し若い頃の作品と比べると、やや冗漫な印象はあります(そこ行くと、「そして船は…」はよく纏まっている。こぢんまりした印象だけど)。しかし、もともとフェリーニの作品、わたしの印象では見ようによっては冗漫な傾向、言葉を変えれば盛り沢山な傾向はあります。

でも、70歳のおじいちゃんが好きなように撮った映画で、結構な作品だと思います。

 

最初から最後まで何か夢を見ているような感じ。

 

フェリーニお約束の胸の大きな女、大きな目の下にくまができている細身の美女(美少年の場合もあった)、何か歌い踊りながらの行列、次から次へなんか出てくるステージ(カトリックの僧尼のファッションショーとか)、とても意外な大きな物とかが、この作品にもふんだんに登場して、つい嬉しくなってしまいます。

 

お祭り騒ぎと、観光客(日本人観光客がなぜか全員レインコートを着て、お決まりのカメラを持っている、今なら中国人観光客だろうな)の喧騒と、それに対して静かな夜と、月の声に耳をすます詩人のサルヴィーニ。

墓場でオーボエで悪魔の曲を吹く男に会うところは、横溝を思い出すけど、そんなおどろおどろしさはありません。やはり何かに囚われた男というエピソードでしょう。

元知事のゴンネッラとサルヴィーニが知り合ってからが面白く、周囲全てが嘘だと思い込んでいる元知事なのだけど、言うことは結構まとも。サルヴィーニが失恋した後、静寂を愛でることを語る二人なのだけど、そういうがそばから、ものすごい大音響のディスコが出現、元知事怒る。しかし、彼の事実上の妻が現れると、ウィンナワルツが流れ、見事なダンスを披露する…

一人になったサルヴィーニに、友人ネストレが、クレーン車の3兄弟が月を誘拐しようとしていると…

訳わからんことになっていますが、訳わからんのは最初からなのです。

それでいいのだ。

もうこの月の誘拐事件で、あかん人はあかんでしょうが、嬉しくなる人もいるわけです、わたしみたいに。

 

そして冒頭に出てきた、井戸の傍で月の声を聞こうとするサルヴィーニで終わる。

とてもいいシーンです。

 

ニョッキとか、ミス小麦粉コンテストとか、語りたいエピソードは満載です。

 

映画を見たなあ、という気分になったので、往年のあれに比べて、とか無粋なことはなしにしたいと思います。