寒い連休の過ごし方～「映画における味覚」小津安二郎の場合
みなさま。
せっかくの連休でしたが、お寒うございましたね。どのように過ごされましたか？
ウチは珍しく夫婦揃って家からほとんど出ない休日でした。
近くのスーパーに食材を買いに行って、当然のように夕食は鍋。
ごく普通の寄せ鍋でした。
食事の時以外は夫などカウチに寝そべって、溜まった録画を見まくり・・・主にプレミアリーグ。
古くなりますがスパーズが「あの」インテルにＣＬで快勝した試合も。
この試合のベイルはすごかった、ワタクシ今一押しの選手です・・・が、現在怪我で離脱中。
夜は夜で、プレミア生中継。
マンチェスターダービー面白かったですね。ルーニーのオーバーヘッドのすごかったこと・・・
「平山の鹿島戦でのオーバーヘッドもなかなかだった」と夫に言ったら鼻で笑われた（ムッ！）
ガナーズがなかなか決められずイヤな感じはしましたが、ウルブズに勝って前節のとんでもない同点劇を一応過去のものにできました。
何しろ本当に久々に夫婦でのんびりしたので、ちょっとこんな会話も。
「うまそうな映画といえば？」
ちょっとアレな文章をお書きになる蓮實重彦著「映画狂人、小津の余白に」もう１０年も前の刊行ですが、なぜか最近読みました。
その中に「映画における味覚～小津安二郎の場合」という一文があります。
小津作品において食事の場面は単に多いするだけでなく重要な意味があることは、数本見た人ならすぐわかるでしょう。蓮實の論では小津作品において「食べること」は「食べないこと」と対をなしていると指摘され、その文を読めば納得するのですが、ワタクシ共が語り合ったのは、小難しいことではなくて・・・
蓮實の指摘通り、小津のカメラアングルからすれば、たとえば「東京物語」にしても登場する食事シーン、確かに何を食べているか、食事の内容は見えないのです。
杉村春子、中村伸郎演じる夫婦の食事シーン、中村伸郎が「うまいなあ、この豆」、杉村春子が「およしなさいよ、豆ばっかり」というので豆を食べていることはわかりますが、豆そのものは写らない（このシーン大好き）。
母親東山千栄子の葬儀後の精進落としも、食べているものは写らない。
他の作品でも同じように食事の中身はあのアングルでは写りようがありません。
でもどれもおいしそうに見えたのはわたしだけかしら？
ただし、そのものが映し出される食べものもあります。
それは、お酒とお菓子。
小津作品のケーキは特別な意味があるようで、よく出て来ます。
当時は贅沢なものだったので、左翼映画青年からは食べるにも事欠く人が多い中、世間離れした小津作品の暮らしに非難が集まったとか。
しかし夜おとなだけでケーキを食べていると、子どもがトイレに起きてきて、何か感じて目をこすりながら確認する様子、あわててケーキを机の下に隠すおとな、描写の秀逸さは言うまもなく、またケーキの持つ魅力を伝えてきます。
食事シーンとケーキを食べる（「紀子さん、パン食べる？あんパン」もまた）シーンは意味が違うので、そのものが映るのでしょう。
小津作品ではそのものが見えないのになぜ食事シーンがおいしそうなのか、夫と話して至った結論では、「おいしそうに見える」は「幸せそう」ということだろう、そうすると小津作品の食事シーンは家族が揃っているシーンだということになる。
直接写りませんが、最初に訪ねた山村聡演じる長男の家で、老夫婦歓迎の食事「すき焼き」の準備も幸せの象徴のようです。
精進落としも兄弟が揃って「家族」の姿をなしている最後のシーンとして、幸せの残滓は見えるけど、両親の姿はもう排除されています。
（おいしそうに見えるもうひとつの原因は、杉村春子の演技力に負うところもあると思います）
最後は残った父親たったひとり・・・去っていく三男の嫁原節子ただ一人。
やはり｢揃って食事する」幸福感の表現が、おいしそうな食事シーンになるのでしょう。
さて、まずそうな食事シーンは？
これはいっぱい思いつきます。
食べるシーンでなくてもアルミホイル噛んだような不快感が全面に漂っています。
わたしが「うわ、まずそう」と思ったのはベルイマン「叫びとささやき」で、メイドがお祈りしたあとかじる丸い石のようなパン。ベルイマンは「ファニーとアレクサンデル」で豪華な食事シーンがありますが、おいしそうな食べ物というよりは、まるで飾りのよう。彼の登場人物は食べることにはほとんど関心がないようです。
評価できないのがフェリーニ。
「ローマ」や「サテリコン」の猛烈な食欲は、見ていてげんなりするけど、おいしそうなのかなぁ・・・
以上、記憶のみで書いているので記憶違いがあるかもしれません。
お気づきの方はご指摘下さいまし。
