家で映画を〜「世界の涯の鼓動」

サッカーのシーズン中はJリーグ(J1、J2、J3も)、イングランドPLリーグ(来季からどうなっちゃうのかしら?)、セリエAを見たりチェックしたりするのに忙しく、映画を見るような時間がありません。

夜見ればいいのだけど、前回も書いたように、すぐ眠くなってしまうから夕食後の時間は旅番組などをボーッと見るのが精一杯。

 

しかし、JリーグもプレミアもセリエAも応援しているチームが全敗だったりすると、全部見る気力はなく、時間があくのです。

応援なんかしないで、ただフットボールを楽しめばいい?そんなの無理。一度試合を見始めたら、どちらかをつい応援してしまいます。それは草サッカーでも幼稚園サッカーでも。

そのおかげで、FC東京とジェフとノースロンドンの2チームもリーズもサッスオーロも負けると、見る気力な〜し。

 

そんなある日。

それじゃ映画を見ようということで、以前に録画していたヴィム・ヴェンダースの「世界の涯の鼓動」を。

 

 

パリ、テキサス」「ベルリン・天使の詩」の巨匠ビム・ベンダース監督、「リリーのすべて」のアリシア・ビカンダー、「X-MEN」シリーズのジェームズ・マカボイ主演による恋愛サスペンス。フランス・ノルマンディーの海辺にあるホテルで出会ったダニーとジェームズは、わずか5日間で情熱的な恋に落ち、互いが生涯の相手であることに気付くが、生物数学者であるダニーにはグリーンランドの深海に潜り地球上の生命の起源を解明する調査、そしてMI-6の諜報員であるジェームズには南ソマリアに潜入して爆弾テロを阻止する任務が待っていた。互いの務めを果たすため別れた2人だったが、やがてダニーは潜水艇が海底で操縦停止となる事態に遭遇し、ジェームズはジハード戦士に拘束されてしまうという、それぞれが極限の死地に立たされてしまう。

2017年製作/112分/G/ドイツ・フランス・スペイン・アメリカ合作
原題:Submergence
配給:キノフィルムズ

 

いつものように映画.comから拝借。

 

 

ロードムービー3部作」や「パリ、テキサス」などを熱狂的に支持していた人たちには、その後のヴェンダースの作品はガッカリさせるものであったようです。

「ベルリン・天使のうた」も私は好きだけど、御大になったしまった彼を嘆く向きもありました。

ランド・オブ・プレンティ」のような小品にかつてのヴェンダースの残滓を見られるとも言えるでしょう。

ただ私には年月を経て、低迷期もあるにはあったけど、ヴェンダースヴェンダース、やはり良いと思われます。

この作品の前年作られた「アランフェスの麗しき日々」という、もう彼の全編彼の好きなように撮った作品を見ました。

ここでソフィー・セミンを相手に、幼い日の性的目覚めや、愛について、そして詩を、詠い語るレダ・カティブが、本作品では南ソマリアの過激派になっていたのには少しびっくり。でも彼の容貌といい名前といい、もしかすると中東かそっちの方の出身なのかもしれない。

 

 

 

と、余談から入ってしまった。

 

やっぱりこれもヴェンダースらしい美しい映画でした。

今回は「水」がダニーとジェームズを繋ぎ、水によって彼らは引き離され、水によって遠く離れているのに、まるで一緒に入水したようなエンディングを迎えます。

冒頭にダニーが潜水服を着て、深海に潜るシーンがあり(最後の深海探索のための訓練)、ちょっとヴェンダースにしてはいつもと違うような入り方でしたが、そのうちにジェームズと出会い、恋に落ちるところあたりから、やっぱりヴェンダースでした。

ヴェンダースがあまり撮らないと自分で言っていた、二人が見つめ合うシーン、少し小津さんぽいけど、小津さんは二人の視線が微妙にずれる。ここでは一瞬彼らの視線はカメラを通してこっちを見つめながら、しっかりと交わる。

深く愛し合いながら共に過ごした時間は僅かで、二人はそれぞれの使命のために任地に赴きます。

それにしてもMI-6にしちゃ、入国してすぐにバレて拘束されてしまうの、どうなのかしら?

で、後半はほとんどイスラム過激派に投獄され、いたぶられ、何度も殺されそうになるシーンが続きます。

ソマリアの無法なそして原理主義的な過激派の描き方が強烈で、ヴェンダースは宗教のために死も厭わず、殺人も簡単に行うことへの嫌悪感を語っています。これもテーマの一つなのでしょうが、少しその部分が長くて、印象が強すぎてしまったのはどうなのかな?

ダニーは潜水訓練と深海生物かなんかのサンプルの研究などをしながらも、ジェームズへの渇望に悩まされます。

ジェームズは肉体的にも水への渇きと、ダニーへの愛の渇望に苦しみます。それでも生きて合うために、ふつーなら4、5回は死んでたと思うけど、何とか生きながらえ、スパイとしての使命も全うします。

 

愛のもどかしさ、というのはヴェンダースにしばしば見られるものではないかと思います。

パリ、テキサス」でもそうだったし…

 

二人の最後はどう見たらいいか、それは観客に委ねられます。

ハッピーエンドが好きな人は彼らの窮地から誰かが救い出してくれて、ノルマンディーのホテルで感激の抱擁、でも良いでしょう…

でも、渇望は水によって癒され、彼らはそこで遠く離れていながら、共に生涯を閉じる方がロマンティックではないかと。

「人間は水でできている」と、ジェームズ。

 

こうして「水」がつなぎ、「水」が隔てた作品は終わり・・・

 

これも映画.comのユーザーにはあまり評判がよろしくないようですが、私はやっぱりヴェンダースだなと、納得した作品でした。