映画「靴ひものロンド」〜ゴダールの訃報を聞いた日に

6月以来の更新です。

3ヶ月更新してないブログにはこうしちゃるからね、ということかなんか広告が画面に…

すっかりご無沙汰してしまって、不義理をお許しくださいまし。

6月7月と入院し、2度ばかりもうダメかな…と思うようなこともありましたが、なんとか生きながらえ、ようやく最近入院前の状態に近づいてきました。

 

そんなこんなで、映画でも見に行こうか、ということに。

その朝、ゴダールの訃報が入りました。91歳、スイスで合法的に自殺幇助を受けて無くなったとか。

2018年の「イメージの本」が最後の作品となりました。

これも彼の脳裏に仕舞われた有り余る知識、情報が、独特の美しい画面と共に次々と繰り出される彼らしい作品でした。

もう現れようのない監督でした。

 

何かが終わったような気分…

 

でしたが、オシムさんなら「それでも人生は続く」

 

で、立川のキノシネマにイタリア映画「靴ひものロンド」を見に行きました。

 

 

 

シールもらった…

 

 

また映画.comから借ります。

 

ワン・モア・ライフ!」「ローマ法王になる日まで」などで知られるイタリアの名匠ダニエレ・ルケッティが、ドメニコ・スタルノーネの小説「靴ひも」を映画化した家族ドラマ。

1980年代の初頭。ナポリで暮らす4人家族の平穏な日々は、父アルドの浮気によって一変した。両親の激しい口論や父の魅力的な愛人、壊れていく母ヴァンダの姿を見つめながら、子どもたちはローマとナポリを行き来する。数年後、離散していた家族はふとしたきっかけで再び一緒に暮らすことに。それからさらに月日は流れ、アルドとヴァンダは夏のバカンスへ出かけるが、帰宅すると家は激しく荒らされており、飼い猫がいなくなっていた。

アルドとヴァンダの若き日を「幸福なラザロ」のアルバ・ロルバケルと「輝ける青春」のルイジ・ロ・カーショ、老年期を「息子の部屋」のラウラ・モランテと「ボローニャの夕暮れ」のシルビオオルランドがそれぞれ演じた。「イタリア映画祭2021」では「靴ひも」のタイトルで上映。

2020年製作/100分/G/イタリア・フランス合作
原題:Lacci
配給:樂舎

 

 

イタリア映画といえば家族もの、と古いイメージで見るとかなり違うけど(心温まらない家族映画、むしろこわ〜い)、このゴチャゴチャさ加減、わやくちゃな感じはイタリア映画っぽい。

ダニエレ・ルケッティ、他の作品は見ていないのだけど、なかなか意地の悪い視線を持っています。

父親アルドはかなりいい加減というか、流される男、女に強く出られると…正論(とは限らないけど)ぽいことを言われると引いてしまうだらしないヤツ。ちょっと成瀬の男に似ているところも。違うのは、生活力があり、一時はそこそこのセレブみたいに振る舞っているところ。

母親ヴァンダは、ルケッティ監督も女性にはタジタジなこと言われたのかなあ、と思わせる人で、徐々に夫と自分を追い込んで行く。

夫の浮気というか、心変わりは気の毒だし、我慢ならないでしょうけど、事態をさらにややこしくする言動を取ってしまう。

アルドも父親として欠点は多いけど、それなりには子どもたちを気にかけているようなのに、やることなすことヴァンダに全否定されては辛いでしょうね。

靴ひもの場面は父娘の奇妙な結びつきを象徴するようでした。

ヴァンダは、夫にきついことしか言わず、そうしながら自分も追い込まれて行くのですが、

しまいには、そこから飛び降りるんだろーなー、でもそこからじゃ死ねないなー、わかってやるのかなあと思うが早いか、飛び降り自殺を図り、しばらくは娘(この頃まだローティーンではないかと)に介護される。

その娘、息子たちは、この事態に静かに耐えているように見えます。

しかし、アルドとヴァンダがヨリを戻して老年夫婦になって、子どもたちが中年になった時、子ども心に感じていたことが明かされる。

娘アンナは可愛い子だったし、密かに父親の愛人に憧れて、大人になったらこんな女性になりたいと思っていたと。

これは私にはわかる反応です。

思春期の娘は母親を批判的に見ることがあり、「こんな女になりたくない!」と思ったりする。

父親の愛人という存在は微妙なものだけど、母親にはないイキイキした魅力に囚われたのでしょう。

 

しかし、実際には大人になったアンナは無惨に肉のついた中年女になり、かわいかった弟サンドロも父親以上にだらしなさそうな男になっている(アンナもそう指摘する)。

 

一悶着どころか幾つ悶着があったかわからないこの家族、最後に子ども(といってもいいおばさんおじさん)が親へのしっぺ返しのように大破壊を繰り広げて、ある種痛快に終わります。

 

どの人物像も意地悪によく描けていて、特にヴァンダは女の怖さ満載。ヒステリックな発言も、チクチクいう言葉、例えばアルドが美人の若い女子に騙されて払わされた30ユーロについてもくどくどと繰り返し、必ず「美人だったし」と言い添えるところなぞ、ここまでくどくはないと思うけど、多少身に覚えもなくはない…

 

まあ私としては曰く付きの名前「ラベス」という名の猫が無事に過ごしてくれればいいな〜と思って終わります。