家で映画でも〜「ギミー・デンジャー」
続けてジム・ジャームッシュ監督の作品です。
しかし、こちらはジャームッシュというより、イギー・ポップの映画。
ギミー・デンジャー
ジム・ジャームッシュ監督
2016年の制作
知らない人のために書くと、真ん中の怖い顔した男がイギー・ポップで、この4人はthe stooges、ストゥージズというアメリカのバンドです。
ジム・ジャームッシュ監督がイギー・ポップ率いる伝説のバンド「ザ・ストゥージズ」に迫る音楽ドキュメンタリー。イギーの熱烈なファンでもあるジャームッシュは、「デッドマン」「コーヒー&シガレッツ」で彼を役者として起用。長年に渡って親交を深めてきたイギーから「ストゥージズの映画を撮ってほしい」とのオファーを受けた。イギーを中心に1967年に結成され、74年2月のライブを最後に自然消滅したバンド「ザ・ストゥージズ」。3枚のアルバムはいずれもセールス的には失敗したが、パンクムーブメント以降、その評価は高まり、2010年にはロックの殿堂入りを果たした。本作ではイギーを軸としたメンバーと本当に近しい関係者にのみ取材を敢行。当事者だから語ることができるストゥージズの真実が、新たに発見された映像や写真などとともに語られていく。
(いつものように映画.com)
コーヒー&シガレッツのイギー・ポップはなかなかいい味を出していて、ジャームッシュの映画に似合う俳優でした。
しかし、この映画を見るまで、わたしはミュージシャンとしてのイギー・ポップをかなり誤解していました。
そもそもストゥージズをほとんど知らなかった…イギー・ポップがバンドを持っていたとは知っていたけど、その名前も、どんな音楽かもよく知りませんでした。
西海岸の音楽は結構好きで知っていたのですが、彼らやMC5のようなアメリカ東部の音楽には触れるチャンスが少なかったように思います。
イギー・ポップといえば、そのバンド活動が行き詰まってから、デヴィッド・ボウイと組んでなんかやった、ということしか知らず、デヴィッド・ボウイの友達か、悪く言えばボウイに引き立ててもらった人か、と思っていました(ちなみにデヴィッド・ボウイは一回香港でステージを見たけど、特別好きではない)。
まことにすまん、すまん。
この作品を見ると、デヴィッド・ボウイに勝るとも劣らない、というより音楽的には全く別物の、すごいミュージシャンじゃないか、と彼らの活動停止から四半世紀経ってようやく知ったのでした。
というだけでも、この作品の存在意義があります。
ストゥージズのレコードセールスはうまくいかなかったそうですし、そのパフォーマンスのフィルムもあまり多くはないようです。
作品ではその当時のストゥージズのパフォーマンスを見ることができます。
それが、すごいの。
彼らの後のパンクやオルタナティブロックに大きな影響を与えたというのは、すでにそのどれもが存在しないバンドになっていますけど、よくわかります。
イギーの、上半身裸でオーディエンスの中にダイブするところなんか、何だこの人が始めたのか、と…
ものすごくアバンギャルドでパンキッシュで圧倒的な熱量で、これぞロック。
デヴィッド・ボウイが気に入ったというのもこの写真を見ると、わかります。
今頃そんなこと感心するのもどうかと思いますが、ずっと知らないよりは良かったかな…
ストゥージズの音楽そのものは、大好きになったわけではないけど、彼らの凄さは十分伝わりました。
メンバーのうちの3人はすでに故人、かなり酷そうなヘロイン中毒だったイギーは健在です。
彼のインタビュー中心のフィルムですが、途中にはアニメーションが入れてあったり、ジャームッシュのユーモアもいい味付けになっています。