コロナ禍の中で聴く「マタイ受難曲」〜バッハ・コレギウム・ジャパン演奏会

最初の一音から、コラールの一声から、いきなり胸に迫るものがあり、泣きそうになりました。

何かとても渇いていたのだと…梅雨は長かったけど、とても渇いていたところに、素晴らしく美しい音が降り注いできました。

 

バッハ・コレギウム・ジャパンの公演、4月10日に行われるはずだったのが、新型コロナの影響で8月3日に延期され、さらに客席の間を開けるため、昼夜の2回公演となりました。

 

bachcollegiumjapan.org

 

 

 

 

公演の写真は撮れないのでありませんが、たいそう印象深いコンサートでした。

味スタでもそうだろうけど、入場にあたって手指を消毒し、熱を測ります。

客席は一つおき、後ろはずらして一つおき。

最前列から2列目までは空席にしていました。

舞台は、演奏者もできるだけ間を開け、いつものぎっしりした感じはありません。

ソリストもソーシャルディスタンス。

合唱も演奏者もソリストもみんなマスクをして登場。

着席するとマスクを外し、楽譜立てに引っ掛ける…打ち合わせしたのでしょう、不思議な光景でした。

鈴木雅明の、バッハへの敬愛と、イエスの受難への深甚な思いの籠もった指揮で、聴く者もともにその語られる場に証人として立つような気持ちになります。

何度も聴いていますが、バッハのマタイ受難曲は、痛みと悲しみと苦しみとに満ちていて、それ以上に慰めと平安と愛に満ちていて、このような時期に聴くとさらに心に深く沁みるものがあります。

 

 

2回公演でなんと言っても大変だろうと思うのは、エヴァンゲリスト桜田亮)でしょう。

とても素晴らしいエヴァンゲリストで、何回か泣きそうになってしまいました。

アレルギーなのかしら、時々鼻を掻いたり首をコキコキするのがちょっと気になったけど…

ソプラノの森麻季は声はもちろん美しいし、美貌でデコルテのきれいさに見惚れてしまうようなドレスもよく似合っていました。

エス役の加来徹、松井亜希などお馴染みの方々。

この曲で最も悲痛で最も美しい「ペテロの否認、悔恨の涙」のところは、エヴァンゲリストは完璧だったと思います。

とても残念だったのは、アルトの青木洋也が喉を痛めたのでしょうか、声が出ていなかった…

1番の聴かせどころだったのですが…

夜の公演では調子を戻されるといいのですが、どうだったかしら?

 

そうは言ってもこうしたコンサートに飢えていたし、それにコロナ禍にあって、いやでも生死について、コロナ禍によってあからさまにされた人間の弱さや悲しみや身勝手さなどについて、思うことも色々あった中で、この音楽を聴くことができて、むしろ延期になってよかったのかもしれないと思いました。

 

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うちにあるBCJのCD。

 (文中敬称は略しました)