ミニヴァー夫人

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(注意)おしゃべりなオバブログですので、映画や小説の記事はほとんどネタバレです。
ストーリーを知りたくない人は読まないで下さい。


NHKBSではアカデミー受賞作をシリーズで放送しているようです。

これは巨匠中の巨匠、ウィリアム・ワイラーの1942年アカデミー賞作品。
ジャンルとしては戦意発揚映画ということになります。
当然ながら、日本公開は戦後。
敗戦直後の日本人がこの映画を見て、どう感じたか。
いろんな意味で衝撃だったのではないかと思います。
わたしの母はハリウッド映画が大好きで、日本映画には激しいコンプレックスを持っていました。その母が「戦後アメリカ映画を見て、これじゃ日本は戦争に負ける訳だと思った」と言っていたのを覚えています。
この作品でも、戦争中にしては優雅な日常が描かれていて、当時の日本人にはショックかも。
だいたいヒロインのミニヴァー夫人って、イギリス中流階級の夫人ということですが、
メイドさん二人もいるし、家は立派だし、要するに「貴族でない」ということです。
日本人のイメージする中流とはエライ違い。
ただこれはアメリカ映画ですから、ハリウッドのイメージしたイギリス社会なのかもしれません。ワイラーはユダヤ系ドイツ人で、イギリス人ではありません。

で、戦意発揚映画といっても、最後に取って付けたようなシーンがあるくらいで、
わたしにはむしろ戦時中の日常の描写がよく描けていて、印象的でした。
ミニヴァー夫人役のグリア・ガースン、たっぷりとした美女です。
3人の子持ちで何不自由ない家庭の奥様、という感じが良く出ていました。
彼女をぼんやりながめるだけでも、この映画は楽しめるかもしれません。

話は有名なダンケルクの戦いを含む「銃後の戦い」が描かれています。
戦闘シーンはなく、市民の生活が今のわたしから見るとのんびりした感じに描写されます。
それでも徐々にドイツ軍の脅威は迫ってきて、最後には爆撃で骨組みだけになった教会で、牧師がちょっととってつけたように戦意を高揚すべくメッセージを述べて終わります。
ワイラーがどの程度意識して作ったかは、彼の伝記的な知識がないので、わかりません。この作品を見たかぎりでは、戦意高揚の部分より、ファーストシーンののんきで楽しげな生活ぶりや、グリア・ガースンの美しさなどが印象に残りました。

アカデミー賞としてはやはり戦意発揚のメッシージが評価されたのでしょう。