家で映画でも〜「知りすぎていた男」

最後の3本は、巨匠と言われる監督の作品です。

「偉大なるマルグリット」も面白かったけど、とりあえず安心のブランドを…

ということで、

 

「知りすぎていた男」

アルフレッド・ヒッチコック監督

1956年の制作

 

またどうでもいいことですが、実はワタクシ、ヒッチコックを特別好きでもなくて…

この作品もなんと初見です。

そして、ドリス・デイの歌う「ケセラセラ」が、この映画のテーマ曲だったと、今更知るという無知さ加減(恥恥)。

ぼんやりバレイを重ねていると、こうなるのです。

 

 

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アルフレッド・ヒッチコック監督が1934年の自作『暗殺者の家』をセリフ・リメイクした、異国情緒豊かな巻き込まれ型サスペンスの傑作。ヒロイン役ドリス・デイの歌う「ケ・セラ・セラ」がアカデミー歌曲賞を受賞。

ストーリー

パリで行われた会議に出席した米国人医師ベン(ジェームズ・スチュアート)は、元歌手の妻ジョー(ドリス・デイ)と息子ハンクとモロッコを旅していた。ベンたちはバスの中でトラブルに巻き込まれるが、ルイという若いフランス人に救われる。お礼にベンがホテルの自室にルイを招待したところ、見知らぬ男が突然ドアを開け、部屋を間違えたと言ってあわてて帰って行った。翌日、市場に出かけたベンは何者かに刺されたルイと出会い、瀕死の彼から謎めいたメッセージを託される。

(CSザ・シネマの紹介記事を借りました)

 

 

ホテルのレストランでイギリス人ドレイトン夫妻と仲良くなり、翌日一緒に市場へ出かけると、フランス人ルイが瀕死の状態でベン夫婦の元にやってきて、メモをわたして生き絶える。

ベン夫婦は警察で事情を聞かれることになり、ドレイトン夫人に息子のハンクを預ける…

夫婦が警察にいるうちにハンクもドレイトンもいなくなり、電話がかかってくる、「息子を誘拐した」と。

ベンはモロッコの警察に事情を話すなんてことはせず、ハンクを取り戻すべく行動を開始…

 

あくまで元気な頃の積極的で自分のことはなんでも自分で解決するアメリカ人らしいベンと、時に夫よりよく気が付き、賢く美しい妻ジョー。

ドリス・デイが息子が心配で、涙を流すヒッチコック好みのシーンが何度もあり。

 

某国の権力争いにより、イギリスに滞在している首相暗殺計画があることをスパイのルイが突き止め、その計画の実行犯の居所をベンに託したのでした。

なんでベン夫婦なのか、ジョーも心配した通り、開けっぴろげになんでも自分のことを喋ってしまったので、こいつならやれるかもと思われてしまったのかと思うけど、どうも事前に調べたらしい…

ともかくルイに託された「アンブローズ・チャペル」を探しに、イギリスへ。

反政府グループは、自家用飛行機でハンクもイギリスへ連れて行った。

イギリスでは、ブキャナンという刑事が待ち構えていて、ハックの誘拐を知っていて、ルイのメモを教えろというのだけど、ベンは教えず、一人で息子を探そうとします。

「アンブローズ・チャペル」を人名と思ったハンクは不気味は剥製業者を尋ねるけど、不気味なだけでハズレ、ジョーがそれは場所の名前、礼拝堂だと気付き、一人で向かう。

ここからは、ジョーの方がよく働くような気がする。

ふつうチャペルといえば、礼拝堂だろうと思うけど、連絡をとれ、というルイのメッセージで人名だと思い込んだのか?

ともかく、行ってみると、ドレイトンが牧師になって説教してるし、妻だった女が管理人になってる〜神聖な場所をスパイのアジトに知るとは、ふてえ奴らだ。

とはいえ、教会を犯罪者やテロ集団が利用した映画は色々思い浮かぶので、ヒッチコックのこれが元祖でしょうか。

しかし、まだヒッチコックの頃は反政府集団も牧歌的でよかった。

ばれた、逃げろ、となった時、今時の映画なら、ハンク少年の命が危ないはずですが、手あらなことはせず、また嵩高くなるのにハンクは、某国の大使館へ連れて行かれます。

そしてアルバートホールのコンサートに、某国首相が列席、その場でモロッコで雇った殺し屋が、首相を狙撃する計画。

その計画を阻止したのは、ジョーでした。

首相と、演奏者とくにティンパニーとシンバルと、狙撃者と、ジョーの涙に濡れた顔とが、次々と映し出される緊迫のモンタージュ

首相が狙われていることはその場ではジョーしか知らない。(ベンは教会で殴られて気絶)

ジョーは一番女性的な、簡単な解決法を選ぶ、それしかできなかったのだろうけど、彼女の悲鳴に驚いた首相が立ち上がり、弾丸は腕をかすめる。

暗殺から首相を守った女性として、ジョーとベンは大使館へ招かれる。

ジョーが有名歌手でよかった、大使館で歌を披露することになり、そのすきにベンが息子を探す。なかなか探しに行かないところがヒヤヒヤ。

ここでとうとうハンクも消されそうになるけど、ベンが救出する。

 

反政府集団が割と呑気だったので、ベンとジョーも子ども可愛さで太刀打ちできました。

警察があてにできないのはこの作品でも変わらず、イングランドの警察も、ブキャナンが事情を知っているのに、アルバートホールからブキャナンに通報したのに通じない、ことが解決してから到着した。

アンブローズ・チャペルから通報した時も、反応鈍いし。

 

クスッと笑ってしまうユーモアもヒッチコックらしく所々にあり、アンブローズ・チャペルのエセ牧師が、(ヤバイことになったので)説教をあっという間に切り上げて、瞑想が大事です、皆さんうちへ帰って瞑想しましょう、と何も知らない信徒たちを追い出してしまうところもおかしい。

 

「ケ・セラ・セラ」を歌うドリス・デイヒッチコックのヒロインの中では割と庶民的な風貌かと思うけど、子どもを案じる母親と、きれいで堂々たる元人気歌手と同時に表現して、とてもチャーミングでした。

 

J1再開、東京アウェイ柏戦

もしかすると、Hatena blogで東京の試合について書くのは初めて…

じゃなかった、今季初めの、恒例ふうちゃん家予定表と、予想があったわ。

 

fuchanp4.hatenadiary.jp

 

そこでわたしは呑気に東京の順位は3位〜5位としています。

 

そうこうするうちに第1節清水戦に勝ってから、新型コロナの影響で中断。

ようやく昨日7月4日に再開したのでした。

再開後の試合日程はシーズン当初に発表された予定はガラポン、全く違うものに。

感染リスクを考慮して近隣のチーム同士が当たる、と。

したらば。

柏、川崎、マリ、浦和、札幌、鹿島続くんだど。

ワタクシ一挙に弱気の虫に囚われ、もうあきまへん、6連敗する、でも6連敗なら経験あるぞ、2回も。今の選手たちは知らないかもしれないけど〜などど錯乱しておりました。

連敗だ〜の、根拠はまったくありません。

ただ、つおそうな相手が並んじゃった、苦手な相手が来ちゃった、と思うだけ。

まあ少し冷静になって考えても強い相手が並んだことには間違いありません。

で、コロナ前の今季予想は取り消しで、リセットすると、今季は6位で上等。

いずれにしても降格はないので、心配事はなし。

 

ということで昨日の試合は、東京もジェフも同じ時間なので、蘇我夫がTVで、わたしはiPaDAZN観戦。

音はジェフ・水戸ちゃん戦がついていたので、こっちは音無し。

いえね、実況でイライラさせられることが多いから、音はない方がいいのです。

案の定、Twitterを見たら実況がアダイウトンのことを「アダウイトン」と呼んでいたらしい。

 

試合前の予想は、ブンデスやプレミアの再開直後の試合がそうだったように、おそらくそんなにうまくパスが繋がることはなく、ギクシャクするかな、そして日立台の柏では苦しい試合で1点を争うようになることが多いから、そうなるかな、と。

 

スタメンを見て驚いたのは、ケントがベンチにすらいない…移籍のことか?急な怪我か、体調不良?まさか・・・・・・などと心配。

4−3−3はケントがいてこそ、と思っていたのですが。でも期待の安部柊斗が先発。

あっちもクリスティアーノが欠場。これは助かった。

 

果たして、だいたい予想通りの試合になりました。

 

 

 

試合後のコメントにもあったように、前半は久しぶりの試合で無観客だし、硬くなっていたようです。大きなミスはなくても、細かなところで技術的なことも含めてうまく行かないように見えました。

前半早々オルンガに抜け出られたピンチは、が飛び出してコースを塞いだおかげで、ことなきを得ました。これが入っていたら、厳しかった。

ある意味これで決まったかもしれないくらい。大きなプレーでした。

その後、東京も徐々に攻撃に入ろうとしていましたが、ヒシャルジソンディエゴを両足で挟んでタックルし、ファウルの判定ながらカードが出なかった。

ヒシャルジソンはすでに1枚イエローを受けていたので、ここで退場のはずでしたが、主審荒木さんはカードを控えました。警告に当たらずという判断か、前半で退場者を出すことに躊躇されたかはわかりません。

ディエゴが膝を痛めたのは画面からわかりましたが、しばらくはピッチにいて、26分には決決定機を作りました。柏GKキム・スンギュに防がれましたが…直後に、プレー続行ができなくなり、田川亨介と交代…ベンチで顔を覆うディエゴ…ヒシャルジソンめ。

東京は、長いパスを前に送ってはとられて運ばれる、を繰り返していたし、柏はクリスティアーノはいなくても、江坂が非常にいいパスをオルンガに提供できるので、もういつ失点するやら、と早くも胃が痛くなる…(筆者はそういうヒトなので、ほっといてくださいまし)

 

しかし、62分に、ヒシャルジソンが今度はアダイウトンを、またファウルで止め、イエローカードが。はい、退場。

そのFKはクリアされるも、それで得たCKで。

リョウヤがなんかすでに貫禄のCKをファーに送り、モリゲが競り勝って頭で落とし、前を撮っていたリョースケが同じように蹴り込みましたが、剛の足に当たっていました。

CBからCBの得点ね。

 

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(得点者の渡辺剛、後ろは決定機を2回は逃したオルンガ。つよぽん、よくやった!)

 

一人少ない柏にポゼッションされるのは、わたしは気に入らなかったけど。

柏の交代選手は神谷優太とか、仲間隼斗とか、J2好きならよく知っている選手たち。

悪いけど、そんなに仕事はさせなかったぜ。神谷くん、愛媛で13点も取ったのね。

けど守る気になれば東京はそんなに弱くはないから、守りきって終わった。柏は攻撃の手を緩めなかったけど、一人少ないのは影響したと思います。

CKでCBが点を取って守り切る、今季の東京が目指しているサッカーではないようですが、それで勝ったのは、東京らしいと思う。

 要のディエゴが痛んでしまったし、ブラジル人トリオでは無くなってしまった…キョースケも奮闘していたし悪くはなかったけど、ディエゴがいたら、と思うシーンはありました。

安部シューも最後までよく走りました。一番久々の公式戦だったも、上出来ではないにしても、3つのポジションでうまくコントロールできるところを見せてくれました。

これで洋次郎様が本来のプレーができるといいのですが。

そして、ディエゴの怪我が軽症であるように祈るばかりです。

 

これで再開6連敗は免れた、と思う。←だからこの人ほっといて。

 

水曜にはホーム開幕戦…と言っても無観客だけど。

川崎はやっぱりすごく強い。

こういう状況で強いのは、圧倒的な個人技を持っている選手が多くいるチームか、戦術が継続され、チームが出来上がっているところかと思っています。

川崎は後者ですが、個人技に優れた選手も少なくない、家長みたいに。

当然、優勝候補の一角だと思う。

こことやるのはわたしは嬉しくないけど(←『お前は勝てる戦しかやらないのか?』)、早い段階で当たるのは悪くないかも。

 

またDAZNだよ〜

スタジアムへ行きたいな〜

 

 

そうそう、同じリビングで見ていたジェフですが、水戸ちゃんに3−0の快勝!

相手にポゼッションされ、少ないチャンスをきっちり決めるジェフに、夫は慣れないよう、と言ってますが。

 

 

昭和記念公園のユリ、蓮の花など。

昨日昭和記念公園でお散歩しました。

いつもはほとんど行かない西立川口の近くで百合が咲いているとの情報があったので、行ってみると。

 

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カサブランカ・コンカドールという名前。

 

その周辺一帯に、ユリの香りが満ちています。

マスクをしていてもわかるくらいの香気。

 

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前日の強風で茎が折れていた…可哀想。

 

 

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右はユリではなくて、ノカンゾウ

 

 

さほど広い範囲ではありませんが、ユリの美しさと香りを十分楽しめます。

 

 

池の前に鉢植えの蓮が並べられていました。

咲き終わりのもありましたが、これから見頃になるのも。

 

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上品〜

 

 

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池の周辺を歩いて、ハーブガーデンへ。

 

紫陽花は終わりかかっていますが、まだきれいに咲いているものもありました。

 

こちらは、ハーブガーデンの花。

 

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ハーブガーデンから、渓流広場、渓流レストランを通って、こもれびの里へ。

 

 

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こもれびの里の池でもハスの花が咲いています。

 

 

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こもれびの里ではヤブカンゾウが咲いていました。

 

 

いつものようにこもれびの丘を歩きます。

暑いけど、木立の中はとても気持ちが良い。

 

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また謎の野草が咲いていた〜

 

左の状態から、右のようにばらけていくらしい。

なんなのかな〜

 

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山百合も咲いていた。

 

 

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イヌゴマという野草らしい。

 

最後に花木園に寄って、アナベルの見納め、白い桔梗もきれいでした。

 

 

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花木園で咲いていた白いキキョウ。

 

 

まだなんとか散歩できる暑さです。

 

毎年8月は行けないけど、例年ならスタジアムでたくさん汗をかくし、結構歩数も稼ぐのですが、今年はどうなることか…

家で映画でも〜「ゴールデン・リバー」

すでにいろんな人がレヴューに書いているように、この邦題はいただけません。

原題通り"The Sisters Brothers"の方がずっと良かった。

砂金取りに行く話なので「ゴールデン・リバー」なのでしょうが、個性のないタイトルになってしまいました。

 

「ゴールデン・リバー」

ジャック・オーディアール監督

2018年アメリカ、フランス、ルーマニア、スペイン合作

 

何の予備知識もないままWOWWOWで録画してあったのを、今まで西部劇見てないから、今回は西部劇の新しいやつでも見ようか、と、選んだものでした。

「なんか監督、フランス人みたいな名前だね」

なんて言ってたら、みたいではなく、フランス人が監督をしたアメリカゴールドラッシュの時代の映画でした。

しかも寡聞にして(もう最近こればっかり恥)、知らなかったけどオーディアールはすでに評価の定まった監督のようです、知らんもんは知らんがすまんすまん。

フランス人の撮った西部劇!?ということなのですが、オーディアール監督自身は「わたしは西部劇を撮ったつもりはない」と言っています。

ところで、うちは夫は西部劇が好きなのですが、わたしは相当の西部劇オンチ。話も覚えられず、何を見てもごちゃごちゃになってしまいます。

マカロニ・ウェスタンとの違いくらいは分かりますけど…

 

わたしはそんな貧困なセンスで見たので、これがどうなのかよくわかりませんが、夫が言うには、

まずゴールドラッシュの時代は、西部劇の終わりの時代。

それはそれとして、この映画は、西部劇ではない。と。

監督もそう言っているし、1850年代ゴールドラッシュに沸くアメリカを舞台にした、無頼の兄弟の話ということで良いようです。

 

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ディーパンの闘い」「君と歩く世界」「真夜中のピアニスト」などで知られるフランスの名匠ジャック・オーディアール監督が初めて手がけた英語劇で、ジョン・C・ライリーホアキン・フェニックスジェイク・ギレンホールリズ・アーメッドという豪華キャストを迎えて描いた西部劇サスペンス。2018年・第75回ベネチア国際映画祭銀熊賞(監督賞)を受賞した。ゴールドラッシュに沸く1851年、最強と呼ばれる殺し屋兄弟の兄イーライ(ジョン・C・ライリー)と弟チャーリー(ホアキン・フェニックス)は、政府からの内密の依頼を受けて、黄金を探す化学式を発見したという化学者(リズ・アーメッド)を追うことになる。政府との連絡係を務める男(ジェイク・ギレンホール)とともに化学者を追う兄弟だったが、ともに黄金に魅せられた男たちは、成り行きから手を組むことに。しかし、本来は組むはずのなかった4人が行動をともにしたことから、それぞれの思惑が交錯し、疑惑や友情などさまざまな感情が入り乱れていく。

 

Sistersという姓をもつイーライとチャーリーはひどい無頼漢の父親に虐げられて育ち、チャーリーが父親を殺してしまったという過去を持つ。

イーライはそのことで弟に引目を感じている…って、どんだけ悪い父親なのか。

二人ともその父親のおかげか、馬鹿みたいに強い殺し屋となり、「提督」と呼ばれる男に使われる身となる。提督は無慈悲な男で、めんどくさい奴は次々に殺させ、失敗すれば自分たちが今度な狙われる、そんな日々を送っている。

イーライはそんな生活に嫌気がさしているようだけど、チャーリーは兄より要領よく提督に取り入って、兄より厚遇されるようになる。

兄弟でも微妙な関係。

でも旅の途中、お互いに髭を切ったり、髪を切ったりし合う。

仲が良いなどという生易しい表現では言えない、"The Sisters Brothers"。

イーライの人物像が面白く、毎夜女物のスカーフの匂いを嗅いで寝る…娼婦にそのスカーフをプレゼントしてもらうふりをさせる…ものすごく強いのですが、とても弱く繊細はところがあります。

 

西部劇と違う、というのは、冒頭から撃ち合いのシーンはあるのだけど、真っ暗で(夜)見えず、敵が誰だかもよくわからず、銃声が消えてから、惨たらしい死体が転がっている。

撃ち合いらしいシーンは、砂金を取る川で行われるところくらい。

だいたいラスボスであろう提督も、思いがけない形で作品中から去ります。

 

もうこれで最後にしようという仕事が、黄金を探す化学式を発見したという科学者を捉えて何がなんでも化学式を聞き出すということと、その男を追っているはずの連絡係の男ジョン・モリスが裏切ったのではないかとの疑いで、ジョンをも追うことになります。

このジョンが面白くて、いつも丁寧な文章の手紙をよこす。

兄弟からは気取った奴、と言われています。

ジョンは科学者のハーマンから採集した金を元手に、貧乏人もなく搾取もない平等な理想の社会を作るという夢を聞かされ、その話に心を奪われている。

ハーマンを提督に引き渡す気も化学式を教える気もないようです。

そして、兄弟は色々なエピソードを加えつつ(途中でとんでもなく大きな女ボスを倒してお金を奪ったり)、この二人に加わって、砂金取りをします。

現代人の目から見れば、化学式で金が取れると言っても、環境破壊そのもの。そんなの素手でやって、無事で済むはずないし…

 

 

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そして、欲が孕んで罪を生み、罪が熟して死を生みます、の言葉通りのことに。

 

理想郷を夢見ていた二人はかわいそうなことに。

そして、彼らの理想郷には関心のなかった現実主義そのものの兄弟は、体の一部は失ったけど無事に生き抜きます。

提督の命令には背いたのですが、前述のように思いがけない形で提督も去ったので、おそらく少年の頃飛び出したきりの、我が家へ帰ります。

母もあらくれ女で凄まじいのですが、二人が「危害を及ぼさない」兄弟であると分かってからは、母の顔に戻ります。

兄弟は女ボスから奪ったお金と、砂金も持っているのでしょう。

「お家」で温かい食事をとり、ベッドでゆっくり安眠する、実はこれぞ理想郷かもしれない、と見ているわたしが思うところで、4人のうちこの兄弟だけはハッピーエンドでした。

多分視聴者の女性はそういう人が少なくないかと思うのですが、わたしはジョンが気に入ってたので、生き残って欲しかった…

でも、理想郷の話に感化される、丁寧な手紙文を書ける男なんて、やっぱり去ってしまうタイプでしょうね。

 

ゴールドラッシュ時代を舞台にした無頼の兄弟の、ちょっと捻った話でした。

家で映画でも〜「偉大なるマルグリット」

土曜日にはJ1が再開されてしまうのですよ…

ああ嫌だ嫌だ、また心配とため息と、動悸と、無駄な興奮の日が来る…

え?

嫌なら見なきゃいい?

全くその通り。

しかしサポですから。見てしまうのです。

わたしは超ネガティブサポなので、もう心配で仕方ないけど、サポだから、見ないわけにはいかないのさ、そうジャンキーですわ。

 

家でも映画を見る時間がなくなってきた。

レビューを書いてない作品ストックも後これを入れて4本です。

 

「偉大なるマルグリット」

グザビエ・ジャノリ監督

2015年フランスの制作

 

WOWWOWの番組内容を見たら「自分が音痴だと気がつかない歌の大好きな伯爵夫人が、リサイタルを開くと言い出し…」などと書かれていたので、これは気楽にウヒャヒャと見られる映画だろうと思ったら…

さにあらず。

相当に痛い思いをさせられる映画でした。

 

いつものように、ネタバレなど気にして書いてないから、この映画を見ようと思っている人は最後までお読みになりませんように。

 

 

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音痴にも関わらず多くの人々から愛された伝説のソプラノ歌手フローレンス・フォスター・ジェンキンスをモデルに、音痴の歌姫マルグリットの数奇な運命を、「大統領の料理人」のカトリーヌ・フロ主演で描いた人間ドラマ。1920年、フランス。新聞記者のボーモン(シルヴァン・デュエード)は、パリ郊外にある貴族の邸宅で開かれたサロン音楽会に参加する。しかし主役であるマルグリット夫人は、救いようのない音痴だった。しかも周囲の貴族たちは礼儀から彼女に拍手喝采を送り、本人だけが事実に気づいていない。野心家のボーモンはマルグリットに近づくために翌日の新聞で彼女を絶賛し、パリの音楽会に出演者として招待する。音楽を心から愛するマルグリットは、本当のことを言い出せずにいる夫ジョルジュ(アンドレ・マルコン)の制止も聞かず、有名歌手(ミシェル・フォー)からレッスンを受けはじめるが……。共演に「不機嫌なママにメルシィ!」のアンドレ・マルコン、「ルノワール 陽だまりの裸婦」のクリスタ・テレ。「情痴 アヴァンチュール」のグザビエ・ジャノリが監督・脚本を手がけた。

(毎度映画.comより)

 

 

フローレンス・フォスター・ジェンキンス 1868年7月19日-1944年11月26日。米ソプラノ歌手。誰が聴いても音痴なのに、誰からも愛されたという、まさに“耳”を疑うソプラノ歌手。最初はあっけにとられた人々も、いつのまにか自由で大らかな歌声に魅入られてしまったという。1944年には76歳でカーネギー・ホールの舞台に立った。

 

映像、衣装、セットどれも美しい作品です。

ただ、彼女の声だけが…

 

伯爵夫人マルグリットは、慈善事業として邸宅でサロン音楽会を開いている。貴族たち、新聞記者などが招待され、ゲストというよりマルグリットの前座として新人歌手のアゼルたちが「花の二重唱」を披露します。

 

最後にマルグリットが、庭で飼っている孔雀の羽を引っこ抜いて頭に飾って登場、歌うはモーツアルト魔笛」の「夜の女王」のアリア!

あーた、音痴が一番歌っちゃいけない歌じゃないですか…

もう彼女の歌がひどいと知っている貴族たちは心の準備済み、使用人たちは耳栓済み、初めて聞く人たちは呆気にとられ…

しかし貴族たちや慈善家たちは大事なパトロンの機嫌を損ねないように、お世辞を言うし、招待客も高貴な身分の夫人に本当のことは言えません。

マルグリットの夫伯爵は、妻の下手くそな歌を聴きたくないようで、どこか(愛人の家だったりする)へ車で出かけては、帰り道に車が故障することになっています。いつも同じ場所なのが笑える。

誰もがひでえ〜と思うのですが、新聞記者のボーモンだけは翌日の新聞で彼女を絶賛します。

執事(デニス・ムプンガ、写真でピアノを弾いている)は…この男が、実はストーリーが進むにつれ、存在感を増していくのですが、初めは夫人の歌を酷評している新聞を買って隠し、ボーモンの記事だけ夫人に見せるような、忠実な執事というイメージです。

野心家であり、アナーキーな思想の男であり、ダダイストであるボーモンは、夫人を利用し、パリの街で行ったダダイストのパーティーに三色旗を纏った夫人に「マルセイエーズ」を歌わせます。

マルグリットは何がなんでも自宅以外で、少ないけど観客の前で歌えることに大喜び、たいそう気合を込めて、マルセイエーズを歌いますが、無論その音痴さがダダっぽいとボーモンは考えたのでしょう。馬鹿騒ぎになり、マルグリットも警察に引っ張られますが、彼女は懲りるどころか、このイベントが返って彼女の意欲に火をつけたようです。

このパリでダダイズムが流行ったり、共産主義のような新しい思想に影響された時代の雰囲気もよく描かれた作品です。

マルグリットは自分の世界に生きているのですが。

 

作品中にはマリオ・デル・モナコ「道化師」のアリアを歌うシーンもあり、この作品が音痴の貴婦人の勘違いを嘲笑するものではなく、音楽とくにオペラへの愛をも描かれたものであることがわかります。

 

マルグリットはリサイタルを開く、と宣言。

夫の公爵は苛立ち「(あんな音痴なのに)なぜ歌うんだ?」と、本人ではなく愛人に聞くともなくこぼすと、愛人は「あなたに愛して欲しいからよ」と言う。

全くその通り。というか、その部分も大きい。

でも、歌が大好きだ、というのも真実です。

マルグリットは、若くはないにしても、きれいで純心で愛らしい女性だと思うのですが、夫にはそうではないようで…

しかし、執事の撮るマルグリットがオペラの衣装を着たポートレートは、女らしい魅力が溢れています。執事マルデボスには彼女がそう見える、ミューズであり、セックスシンボルでもあるのかもしれない。オペラの世界では、彼女はそうなれる。ということでもある。

リサイタルを開くにあたって、執事マルデボスは、かなり脅しをかけてヴォイストレーナーにスキャンダルを隠し持つ歌手を連れてきます。

その歌手の連れてきた取り巻きみたいのがまた奇妙な連中で…

 

この辺りから執事マルデボスがまるでボス、とオヤジギャグを言いたくなるような活躍。

自分の感情はほとんど口にしない無表情な男ですが、マルグリットへの感情は愛というのか、ある種のコレクターのようで、ちょっと怖い…

 

リサイタルの近づいた日、マルグリットは夫の浮気をはっきり目撃します。

その打ちひしがれようもかわいそう…

そして、夫に「あなたが歌をやめろというならやめて、二人で何処かへ行きましょう」とすがる。夫は妻がかわいそうには思えるようですが、「君の大事な日だろう」とやめさせない。やめさせたらよかったかもしれないのに…

でも、マルグリットは本当に歌が好きなのは、確かなので…

 

まさに血の滲むような努力の末、その日を迎える。

その衣装は、

 

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天使のような羽をつけて歌うは、ベッリー二「ノルマ」より「清らかな女神よ」

 

当然のように努力も虚しく、初めから音程がずれていて、会場はざわつきます。

しかし、嫌々ながらでも遅れてきた夫が着席した瞬間、ほんの短い間だけ音程が合う!

おお!

と思った次の瞬間、マルグリットは血を吐いて倒れます。

 

彼女は入院…

そして、彼女は本当に自分の世界にだけ生きるようになってしまう。

さらにかわいそうなことが…

治療のため、当時発明されていたレコーディング技術で、彼女の歌をレコーディングして、本人に聞かせることになります。

マルグリットはすっかり大歌手気分でレコーディングします。

その自分の声を聞かされる日…

伯爵は電話でそれを辞めさせようとするのですが、電話を受けた執事マルデボスが伯爵の命令を握り潰す…

まさにマルグリットが自らの声を聞いた瞬間、伯爵が到着し、マルグリットは伯爵の腕の中に倒れ込みます。

執事マルデボスは、夫の腕に抱かれて倒れているマルグリットの儚げな表情を捉えて、彼の写真コレクションの最後の作品として加えます。

 

これでおしまい。

 

可哀想。

でも、夫が少なくとも妻を不憫と思ったことが救いか。

 

終わった瞬間は、あんまりじゃないの、かわいそうでしょ!

と思ったのですが、彼女の歌が好き、という純粋なひたむきさがこの作品を、音程は外れても、品性は高くさせていると、感じます。

主演のカトリーヌ・フロが素晴らしい。

実際はこんなに音痴ではないらしく、作品の歌声は加工されたもののようです。

執事マルデボス、夫ほか登場人物もそれぞれに印象深く描かれています。

 

 

やっぱりタダモノではない、ということで、またフランス映画を録画していますが、見る暇があるのでしょうか…

家で映画でも〜「ブロークン・フラワーズ」

さりげなくヴェルディ運命の力」はスルーして、と。

ヴェルディと言ってもあの緑ではなく、イタリアのオペラ作家は好きなのですがね、「運命の力」はちょっと重くて書くのがしんどいので、置いといて、と。

 

ブロークン・フラワーズ

ジム・ジャームッシュ監督

2005年の制作。

 

またジャームッシュです、同じ監督のものを続けて見る癖がありまして。

それに、ご近所トラブルのいや〜な映画を見て、その後「運命の力」の執念深すぎる兄妹を見て、胃のあたりが重くなったので、少し軽めのものを見たかったのです。

 

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(配役はWikipediaからコピペしました)

 

なかなかの俳優陣なのです。

 

作品は、ジム・ジャームッシュですから、やっぱり風変わり、奇妙なお話です。

主人公ドンを演じるビル・マーレイのいつも困ったような退屈しているような顔がピッタリ。

コンピュータービジネスで成功し、不自由ない暮らしをしているようだけど、現在は大した仕事もせず、うだうだと生きている中年男ドン、写真右は、現在の彼女に愛想尽かしされて出ていかれるところです。

彼女のピンクの服が一つのポイント。

ジャームッシュの映画の登場人物は、大きな演技をしない、特にこのドンは、彼女に出て行かれても、大騒ぎするでもなく、TVで昔の映画をボ〜ッと見ています。

そこへ、差出人の住所も名前もないピンクの封筒の手紙が来る。

「20年前あなたと付き合っていて、息子が生まれた。19歳になる息子が家出した、あなたのところへ行くかもしれない」

というような内容。

この手紙を持ってどこへ行くかと思えば、隣の住人ウィンストンに相談。

このウィンストンがなぜか知らないけど、「お前は20年前彼女がいっぱいいたんだろう、その彼女を一人づつ訪ねて行って、息子がいるか最近家出したか聞くといい」とお節介なことを言い、さらには、彼の昔彼女の居所など逐一調べて、「元カノ訪問ツアー」アジェンダを作成します。

ウィンストン何者?

変な隣人の映画を見た後なので警戒しましたが、ただのすごく変わった世話焼きらしい。

 

元カノを訪問するにあたっての服装も指示、さらにはピンクの花束を持参せよ、とのウィンストンのアイデア

ウィンストンの注意ポイントは、ピンク、(手紙を打った)旧式のタイプライター。

 

ドンは嫌だ嫌だと言いながら、ウィンストンのアジェンダに従って元カノ歴訪。

 

最初の元カノがシャロン・ストーンという…

彼女は仕事で留守で、可愛いティーンエイジャーの娘が家に案内してくれるのだけど、さすがジャームッシュ、その娘(ロリータという名前!)家の中では全裸で生活しているらしい。

ドンは目玉が飛び出しそうになりますが、そこは分別ある中年男ですから、母親が帰るまで何もなく、未亡人となった、まだ若くてきれいなシャロン・ストーンと、その夜いいことをして、旧交を温めるのでした。

でも、彼女には娘だけで息子はいない、ただ庭に古いタイプライターが捨ててあった…

 

ドンが少しいい思いをしたのは1軒目だけで、だんだん嫌な思いをすることになります。

 

でも、迎える方だって、アポなしにいきなり20年前の彼氏が現れ、不躾に話をしたいとか言われたら普通嫌ですよね。

 

2軒目は昔はフラワーチャイルドだったかもしれないけど、今は夫と不動産屋で結構儲けているドーラ。フラワーチャイルドどころか、いかにも商売上手っぽい様子。ご主人が鷹揚に「そんならうちで夕食でも」と誘い、不味そうなディナーを、ギクシャクした雰囲気の中食べることに。

その夫婦に「子どもはいるか」といきなり聞くドン、もうちょっとマシな聞き方があろうものを…ますますぎこちない空気になる。子どもはいない。

 

3軒目はカルメンジェシカ・ラング演じる売れっ子アニマル・コミュニケーター。

そこの犬がウィンストンという隣人と同じ名前。

なんだか少し怪しげな商売ですが、患畜が引きも切らず来ていて、大忙し。

その合間を縫ってドンはカルメンと話をしますが、ここも外れ。

手土産の花束もアシスタントに「お忘れですよ」と返されてしまう。

 

しかし、どの元カノ周辺にもピンクのもの(ドーラのピンクの名刺とか)だったり、タイプライターだったり、思わせぶりな小道具が配されています。

 

4軒目が最後ですが、この元カノが一番生活は苦しそう。

荒地の一軒家に、柄の悪そうな夫と夫の兄弟か仲間かといます。

ドンがよせばいいのに、彼女にいきなり「子どもはいるか?」と聞くと、その質問は彼女にはとても痛いことだったらしく、泣き顔で家に引っ込んでしまう。

怒った夫にガツンと顔面を殴られて…

 

鼻を腫らしてこの旅は終わります。

 

家に帰る途中、ヒッチハイク中の19歳ほどの青年を見つけて俺の息子じゃないか?とか聞いてキミ悪がって逃げられ、呆然としているドン…

 

最後に息子が見つかり、悪かった、お父さんだよ、と抱き合う、なんてことは絶対にないと思っていましたが、やはり思った通り。

謎は謎のまま、でももしかすると最初に出て行った現在の彼女が戻ってくるかもしれない。

ヒッチハイクの青年に「過去は変えられない、将来はわからない、いまが大事だ」と格言めいたことを言ったドンですが、本当にそうなるかもしれない、そこはかとなく予感を漂わせて終わります。

 

すっきりしない人もいるかもしれませんが、これがジャームッシュですから。

これでいいのです。

 

家で映画でも〜「隣の影」

「家で映画でも」史上、初の録画消去作品です。

Amazon primeで見る他は、BSで録画したものを見て、DVDに落としています。

が、たまにこれはもう2度と見ない…というのもあり、今回のがそれ。

 

隣の影

ハーフシュテイン・グンナル・シーグルズソン

2017年アイスランドで制作

 

なぜこれを見たかといえば、アイスランドって、よく知らない国だからどんな映画があるのか、映画にアイスランドのどんなことが反映されているのか、興味があったから。

 

アイスランドといえば。

 

わたしが知っているのは、サッカーのナショナルチムがユーロで旋風を巻き起こしたこと、その際に「バイキング・クラップ」と呼ばれる手拍子で知られるようになり、G大阪が真似し始めたこと、ナショナルチームの中心選手グンナル・シグルゾソンは、エバートンの選手(スワンズのイメージも強いけど)、ほぼ全員○○ソンという名前…

あとは、アイスランドデンマーク人芸術家オラファー・エリアソンくらい。

 

この映画の監督もエバートンのMFと同じ名前。

 

原題は"Under the tree"で、こっちの方が良いと思うけど。

 

些細な隣人トラブルの連鎖から人々が暴走していく様子を描いたアイスランド発のブラックサスペンス。閑静な住宅地で暮らす老夫婦が、隣家の中年夫婦からクレームをつけられた。老夫婦宅の庭にそびえ立つ大きな木が、いつも日光浴をするポーチに影を落としているというのだ。それをきっかけにいがみ合うようになった2組の夫婦は、身近で相次ぐ不審な出来事を全て相手の嫌がらせだと思いこむようになる。妻に追い出されて老夫婦のもとへ転がり込んできた息子も、庭のテントで寝泊まりして隣人の監視を手伝う羽目に。やがて老夫婦がかわいがっていた飼い猫が失踪したことから、両家の人々は越えてはならない危険な一線を越えてしまう。アイスランドアカデミー賞と言われるエッダ賞で作品賞、監督賞など7部門を独占。日本では「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2018」国際コンペティション部門に「あの木が邪魔で」のタイトルで出品され、監督賞を受賞した。

(映画.comより)

 

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この映画、つまらないとか退屈とかいうのではなく、不愉快。

いや〜な気分にさせられます。

なので、いや〜な気分になりたい人にはお勧めしますわよ。

 

冒頭、ベッドから抜け出した夫が、PCに取り込んである元カノとのアラレモナイ映像を見ながら、何やら怪しい仕儀に及ぶ、それを妻に見つかり、夫が元カノとまだそんな関係を続けていたかと、妻は怒り狂う。そして、うちを追い出され、両親の家に転がり込む。

その夫婦の話かと思ったら、舞台は、両親の家とメゾネット風につながっている隣の家なのでした。

 

初めのうちは、よくあるご近所トラブルの話でした。

追い出された夫の両親の家の庭にある大きな木が、隣の庭の影になるから切って欲しい、と言われたのが発端。

日本でもよく聞く話です。

で、お父さんは切ってやるつもりで植木業者を呼んだりするのですが、お母さんと隣の若奥さん(中年男の2番目の妻で、若い子をうちに入れたのも隣のお母さんは気に入らない)が話をだんだんこじらせていって、業者も断ってしまう。

お母さん役の女優さんの演技は、かなりのホラーで、怪演です。

長男が失踪してしまって以来、精神が不安定で、見るからにそういう様子。

このお母さんの、時に放心したような思い詰めたような苛立ったような表情、見ている方も不安にさせられます。

お互いの夫はそれでも少しは事態を悪化させないようにしているのですが、隣の若妻も人工授精でストレスが溜まり、お母さんはそういうわけで何を見ても悪くしかとれない、女同士がややこしくしていき、男が巻き込まれていく。

お母さんの飼っていた猫が失踪してからは、もうエライことに。

隣が猫を何処かに捨てたのだと信じているお母さんは、隣が可愛がっている犬に対して、言うも恐ろしい所行に及びます。この辺がわたしの許容範囲を超えている…

もうここからは犯罪。

 

そして誰もいなくなった

 

ではなく、一番メンタルが傷んでいたお母さんだけが残る。

 

そして、外を放心したように眺めていると、お母さんの猫が…

絶対そうだろうと思ったよ、猫は時々いなくなるから。でもお母さんの反応は映されず、猫がトコトコ帰ってきたところで終わります。

 

 

ご近所トラブルの域を超えてしまった。

日本でも、上のうちの音がうるさいとかで刃傷沙汰になることがありますけど。

お母さんの心が病んでいるまま放置していたようなお父さんも息子もどうにかできなかったのか?

一番病んでいたのはお母さんですが、登場人物誰もが多かれ少なかれ病んでいました。

 

なんかやな映画だったね…

と、終わって振り返ると、この映画は日本の映画祭ではホラー部門で公開されたらしい。

作品中に、その大きな木の葉影が時々ザワザワと映し出されます。

そうか、この大きな木が、切ってしまえと言った隣のうちと、最初は切ってしまいそうだったお父さんを呪って、人間どもを操って殺し合いさせたのかもしれない。

お母さんだけ無事だったのは、木を切ることには反対だったからか?

木の呪い、とすればホラーです。

黒い葉影が、禍々しく見えなくもなかった。

 

と言っても、もう2度と見ないから。

 

アイスランドのイメージが下がってしまった…

どこの国にも、ご近所トラブルがあり、どこの国でも…女性の地位は日本のそれよりはるかに高いアイスランドでも…女性にもストレスがあり、乱暴な解決方法をとることもある、という普遍的なことがわかりました。